自然権


【論点】
 自然の生物にも、人間と同様に、権利の主体としての地位が認められて然るべきではないか。

【吟味】

日本では、1995年、奄美「自然の権利」訴訟で、アマミノクロウサギたちが原告として裁判を提起したことから一躍有名になった問題です。

この点について、人間でもない自然の生き物に権利の主体を認めるなんて滅茶苦茶だと反論する声があるのですが、しかし、これは法律の極意に対する甚だしい無理解と言えましょう。法律の極意とは「臨機応変」です。
現に、法律は、人間でも何でもない、ただの組織体や財産の集合についても、必要に応じて、法人(公益法人や会社など)として、ちゃんと権利の主体として認めているのです。或いは相続財産についても、相続人が不明なときには、法律はこの財産をさっさと法人として認め、権利の主体の地位を与えているのです(民法951条)。
ましてや、自然の生き物は、人間と同様、命を持つ存在です。命すら持たない無機的な存在でも、法律は必要に応じてこれに権利の主体の地位を認めているのですから、命の点で人間と同等の資格を持つ自然の生き物に、必要に応じて、権利の主体の地位を認めることに何の問題もない筈です。

残る課題は、
1、自然権をいかに(単に倫理にとどまらず)法的な価値として発見し、
2、いかに適切なシステムとして作り上げるか、
ということだけです。

以下は、1のどのようにして法的な価値として発見していくか、について検討したメモ(ただし、未完成)。

自然権の「価値形態論」の発見について--メモ0(LLW【注1】での議論)(4.12/02)

同--メモ1(同上)(4.17/02)

同--メモ2(同上)(4.22/02)

同--メモ3(同上)(4.23/02)

同--メモ4(同上)(4.25/02)


注1】LLW
新たなパブリックな法律問題・人権侵害問題に対して、専門知識の再編成・成果の情報公開をめざすネットワークのことで、2001年6月に結成されました。

LLWのホームページのトップに、次のように書かれています。

 LLWは 、これまで、伝統的な法律的発想の下では十分に把握・対応できなかった新しい法律 問題・新しい人権侵害問題に対して、これに新しい見地から光をあて、従来の専門的 知識を再編成・再構築して新しい法律問題・人権侵害問題に相応しい解を見出し、こ れをパブリックなものとして公開することをめざす法律関係者の集団です。
 言い換えると、パブリックな法律問題・人権侵害問題に対する法的なツール・システ ム・スキームを市民に提供しようとする、いわばLinux的な法律関係者の集団です。