試作プログラム「AKIRA」の解説

----自作プログラムの完成とその感想----

.5.24/89


コメント
 これを書いた1ヶ月前には、このソフトの製作が暗礁に乗り上げていて、助けを求めて、あちことうろつき回っていました。結局、自分の持っているNECの88ではメモリが小さすぎてダメで、知り合いの所に押しかけてNEC98を使わせてもらい、それで何とか完成させた記憶があります(だから、私は自分の家で、ついぞこれまで一度もこれを実行させたことがないのです)。
 で、このソフトは何とか動いてくれるし、使いようによっては便利なこと極まりないので、それから、コンピュータプログラムの著作権の専門家の人に配ってみたり、著作権情報センターを訪れて配ったりしたものの、その後、何の反応もなかった。中には、面白がって「今なら十数万円で売れるから売ろうぜ」と提案するやつもいたのですが、当時そんな気に全然ならなかったのは、このソフトを作る源泉を与えてくれたのが、ほかでもない、あの「ハッカーズ」の連中だったからだと思う。
 かくして、方々に配って反応を待ったものの、その後梨のつぶてで、今、私の手元には1本きりしか残っていません。しかし、この著作権の国際的保護の問題は、世界資本主義の深化とともにますます日常化している事柄です。にもかかわらず、この問題をコンピュータで自動処理するソフトができたという話は未だ聞いたことがない。一体、どうなっているのだろうか。


1、はじめに

 最近の「シャレード」事件を見るまでもなく、本格的な、著作物の国際的利 用の時代の到来とともに、著作物をめぐる国際的な保護があるかないか、保護 がある場合にその保護期間はいつまでかをめぐって、新たな紛争が予想さ れます。
 この問題は、基本的には、ベルヌ条約と万国条約の条文の解釈とその適用の 問題になるのですが、あいにく、その適用の順序というのが、やたらと込み入 っていて、私のような人間には、考えていくと頭が混乱してきて、訳がわか らなくなってしまいます。
 そこで、このように手順が錯綜している問題こそ、一度コンピュータ・プロ グラムの中に捕えてしまえば、あとは、それを好きな時に好きなだけ利用でき るという、極楽のようなことができるだろうと虫のいいことを思い着き、そこ で、このプログラミングを思い立った次第です。

 このような事情から出来上がったプログラム「AKIRA」は、日本も含めて世界の国々 で制作された著作物が、(日本や外国で)国際的にどのように保護されるか、について、それを 判断するためのプログラムと、その判断に必要な各国の著作権制度のデータを 検索するためのプログラムとから出来ています。

 このプログラム「AKIRA」は、私がパソコンに初めて触れてから1ケ 月余りのとき作ろうと思い立った代物です。その無謀さの御蔭で、その後2 ケ月もの間は、このプログラミングに根こそぎ翻弄されましたが、その翻弄の 末、一応の形をとることができた、このプログラムは、勿論、完成というには 程遠く、単なる試作品の域をでません(というより、この作業は、やればやる だけ、次から次へと新しいアイデア・着想や問題点がわいてきて、いわゆるバ ージョンアップをしていたらきりがないのです。勿論、この、無限のバージョ ンアップの可能性という、無限の上昇感、この感覚こそが、パソコンの尽きな い魅力なのですが‥‥‥)。

 これを、皆さんに紹介した理由は、このプログラムを実際に使用してもらっ て、様々な問題点・誤りを指摘してもらい、現実に使用するに耐えるだけのも のにしたいと思ったからです。
 思うに、このような、条約関係の錯綜した、著作権の国際的保護の問題こ そ、われわれが頭を悩ますべき領域の問題ではなく、完璧主義者のコンピュー タに委ねるべき問題だという気がします。
 どうか、この本格的な、著作物の国際的な利用の時代にあって、われわれ が、このような著作権の国際的保護の判断という機械的な苦役から一刻も早 く解放され、それに代えて、もっと実りある、もっと創造的な、もっと著作権にふさわしい仕 事に没頭できるように、このプログラムの完成にご協力をお願いします。

2、プログラムの構成について
 プログラム「AKIRA」は、世界の国々で、制作された著作物が、国際的 にどのように保護されるか、を判断するためのものですが、次の5つの部分か ら出来ています。

  1. 日本人が制作した著作物が、外国の国に対し、 そもそも保護されるかどうか?
    保護される場合、その保護期間はいつまでか?
    を判断する。
  2. 外国人が制作した著作物が、日本の国に対し、 そもそも保護されるかどうか?
    保護される場合、その保護期間はいつまでか?
    を判断する。
  3. 外国人が制作した著作物が、別の外国の国に対し、 そもそも保護されるかどうか?
    保護される場合、その保護期間はいつまでか?
    を判断する。
  4. 日本の、旧著作権法時代に制作された著作物は その保護期間はいつまでか?
    を判断する。
  5. 世界各国の著作権に関するデータとして
    著作権に関する条約の加盟状況
    世界各国の国内の著作権法で定めた保護期間
    の検索を行なう。

3、プログラムの実行について
 プログラム「AKIRA」は、次の手順で、使ってください。

  1. 使用するパソコンの機種
    NECの9800シリーズのものを、或いはこのシリーズと互換性のある ものを使用ください。
  2. スタート
    最初、システムディスクを使用しないで、直ちに、プログラム「AKIR A」が記憶されてるフロッピーを、ディスクドライブに入れて、リセットス イッチを押します。普通、それだけで、自動的にプログラム「AKIRA」 がスタートします(オートスタート)。
  3. 仕事の選択
    スタ−トしますと、画面に表題が出ますので、リターンキーを押してくだ さい。次に、仕事の一覧表が出ます。その中から、やりたい仕事を選んで、 その番号を入力してください。そして、リターンキーを押すと、いよいよ仕 事の開始です。
  4. データの入力
    一番最初の仕事は、あなたが問題にしている著作物に関するデータの入力 です。画面の指示のとおりに順番に入力してください。
    必要なデータは、おもに次のとおりです。
      1、作者の国籍・居住地
      2、作品の制作時期・発行時期・発行場所
      3、保護を求める相手の国名

    元々、プログラム「AKIRA」は、作品に関するデータベースではあり ません。それは、あくまでも作品に関する必要なデータがそろっているとい う前提で、このデータに対し、著作権条約の条文の適用の順序をプログラミ ングしたものです。従って、作品に関するデータは御自分で収集しておかな ければなりません。
    ただ、現実には、プログラム「AKIRA」が要求する通りにデータが集 められるわけではありません。その場合の対策として次のようにして下さい(この点こそ、このプ ログラムの基本的弱点なのですが)
    1データが不十分にせよ、わかる場合、わかる範囲で入力して下さい。
      ex. 製作時期・発行時期は、年・月・日のうち、わかったところまで、入力
        して下さい。
    2データが全然不明の場合、データの名称を入力して下さい。
      ex. 製作時期 → セイサクジキ
        発行場所 → ハッコウバショ

  5. 質問と回答
    データの入力がすめば、あとは、画面に表示された質問に順々に答えてさ えいけば良いのです。
     この質問の形式は、次の2種類です。
    1、イエスかノーを、きいてくるもの。
    2、いくつか回答があるうち、そこから正解をきいてくるもの。

     ここでの問題は、あなたが質問に答えられない場合の措置です。
     プログラム「AKIRA」では、その場合、回答のもとになる情報を検索 することができるようにしておきました。つまり
     「知らない」という回答欄の番号を入力すると、情報検索ができるように したのです。
     この検索手続きでは、質問にあがっている国のコードナンバーを入力しま すと(この情報検索へのアクセスの方法についても、全くお粗末としかいい ようがありませんが)、その国に関する著作権の情報が表示されます。必要に 応じ、画面のデータを印刷しておけば、何度も情報検索の手続きを踏む必要 がありません。

  6. 結 論
     以上のような質問と回答を何度か繰り返していくと、まず
    1、相手の国で保護されるかどうかの結論が出ます。
     保護される場合、作品が何時から保護されるか、という保護の開始時期が 出ま
     す。
     そのあと、また質問と回答が何度かあって、最後に
    2、作品が何時まで保護されるか、という保護の終了時期が出ます。

 これで、一件落着です。

4、プログラムの問題点について
 これは、挙げたらきりがないのですが、主だったものを挙げますと、

  1. ベルヌ・万国条約の個々の条文の解釈として、(少なくとも、私にとっ て)意味不明なものがあります。
      次の事項を判断するとき、何時の時点を基準としたらよいのか、条文 上、明快でないのです。
  2. プログラム「AKIRA」の仕事のうち、「外国人の製作した作品の、 別な外国における保護」の仕事は、果してこのような構成(=フローチャ ート)でよいものか、実のところ自信がありません。
      当時、勢いに任せて、エイヤッ!で、フローチャートを組んでしまった あんばいで、もうこれ以上考えるのも嫌という状態でした。ですから、こ の仕事は、これから内容を吟味・検討する積りですので、この仕事に関す る誤りは御容赦下さい。

5、検索により表示されるデータについて
 世界各国の著作権に関するデータの項目とその表わし方は、次の通りです。

  1. 条約関係
    1. ベルヌ・万国条約への加盟状況
      次の1から4までの数字で表示
      1:ベルヌ条約のみ    2:万国条約のみ
      3:ベルヌと万国の両方  4:未加盟
    2. ベルヌ条約のパリ改正条約への加盟の有無・加盟年月日
      未加盟の場合→ ×
      加盟の場合 →加盟した年月日
    3. 万国条約への加盟年月日
      未加盟の場合→ ×
      加盟の場合 →加盟した年月日
    4. 日本と二国間条約の有無
      ある→ 1 ない→ ×
    5. 戦時加算の有無
      ある→ 1 ない→ ×
    6. 対日平和条約の発効年月日
      ない→ ×
      ある→条約の発効年月日

  2. 各国の保護期間関係
    1. 実名の著作物

    2. 無名・変名の著作物
    3. 団体名義の著作物
    4. 映画の著作物
    5. 写真の著作物

     以上全てについて、その表わし方は次のようにします。
      ex.死後 50年 → シゴ 50
        公表後30年 → コウヒョウ 30
        製作後70年 → セイサク 70


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