我が輩は蛙(カエル)である

2003年6月6日

20年ほど前、亀(カメ)や梟(ふくろう)に無性にあこがれたときがあった。
身じろぎもせず、じっと虚空を凝視するあの不敵ともいえるまなざしが気に入った−−亀や梟に対する一種の変身願望だった。

しかし、そのとき、彼らに似たまなざしを持ちながら、もっとずっと小さい生き物がいることを知った。
それがカエルだった。

カエルもまた、田んぼや水たまりで、身じろぎもせず、じっと何かを凝視するまなざしの持ち主だった。
しかも、カエルが大好物というヘビがカエルを飲み込もうとする瞬間でさえも、まばたき一つせず、じっと凝視することがあるのを知って、ますますこいつが気に入った。

しかも、カエルは、人間の一生の何十分の一しかない短い命の間に、手に負えないほどの子供=分身を産む。いわば、「ただでさえ少ない出産の機会を最大限利用し」、ズケズケ分身を創り出す。これまた大いに気に入った。

おまけに、その分身は、頭でっかちで、尻尾をプルプル震わせ、めっぽう愛敬がある。
そのくせ、一度、成人するや、蝦蟇(ガマ)ガエルなどは、これがあの幼年時代のなれの果てなのかと想像を絶するほどのグロテスクな姿に変身する。
殆ど全身ユーモアである。

かくして、この大胆不敵なわが蝦蟇カエルに変身した積りで、この世の中を眺めてみたい。