浅田彰への手紙

1997.5.16

(・・・自由の森に保存)



浅田彰 さんへ

 浅田さん、ずっとご無沙汰していますが、お元気でしょうか。私たちは、京都出身の◯谷一耕が浅田さんを昨年1月に埼玉の山奥にある自由の森という学園に呼んだときに、一緒に準備をしたスタッフです。

 一耕から、浅田さんのアドレスをお聞きして、メールを出しました。もっとも、浅田さんは、一耕みたいな美少年でないと嫌かもしれませんが、でもちょっとだけ我慢して、私たちのメールも読んで下さい。

 あれ以来、一耕は浅田さんをてっきり自分の専有物と勘違いしたのか(?)、今春卒業するまで、再び、浅田さんを自由の森に呼んでくるようなことはしませんでした(なんて依存するようなことは言ってはいけないのですが)。
 でも、私たちは、浅田さんが自由の森に来てくれたことをとても印象深く覚えています。あのあとに、中学1年生の(一耕の弟子みたいな)生徒から「ねえ、浅田さん、今度いつ来るの?」なんて尋ねられて、「君!?、中1。で、この前の彼の話、聞いたの」と尋ね返すと、「うん、すげえ面白かったよ」とぬけぬけと言うんです。

 そして、浅田さんの話がとても印象的だった理由には、残念ながら、今の自由の森が閉鎖的で独善的な「自閉の森」に堕していること、ちょっと信じられないような人権侵害の「無法の森」に化しているためだったような気がします。しかし、永続的な啓蒙主義者のような浅田さんという存在の光に照らされて、初めて、そのこと(自由の森が「自閉の森」「無法の森」に堕していること)がくっきりと明らかにされたわけでもあり、やっぱり来ていただき甲斐があったと思いました。

 幸か不幸か、私たちは、この間、自由の森が「自閉の森」「無法の森」に堕している現実に直面してみて、改めて、自由の森が創立当時目指した「自由と自立」という理念が何か創立と同時に実現してしまったもの(もっとも、そのように錯覚していた人たちが多数いたようで、そこからまた今の自由の森に対する幻滅も生まれてきているのですが)ではあり得ず、「自由と自立」を否定するものに対するはてしない批判を反復する中で目指し続けて行くしかないものであることを痛感しています。
 今、自由の森では、一耕的な「すきま人間」が、こうした立場から、「自閉の森」「無法の森」に対する批判を継続しようとしています。その試みのひとつが、生徒・生徒の義務者で編集する自主的な活動「自由の森NGOホームページ」です。今日のメールは、実はこの「自由の森NGOホームページ」を知ってもらう公開講座で、「ためしに浅田さんにメールを送ってみよう」とかいう浅田彰コーナーだったのです(勝手にこんなコーナーを設けてスミマセン)。

 それでもし、よろしかったら、浅田さんに(また自由の森に来て、話をして欲しい、とまでは無理言いませんから)この「自由の森NGOホームページ」を一度覗いてみて下さい。URLは、
http://www.kumagaya.or.jp/~m_akagi/jimori.html
です。それでもし、感想がありましたら、是非とも聞かせて下さい。

 また、これはお願いなのですが、浅田さんは、モノグサな柄谷さんとはちがうから、既に自分で「浅田ホームページ」なるものを持っていらっしゃいますか。浅田さんの発言・対談・文章なら何でも掲載先が分かるようなものです。例えば、以前、武満徹について、浅田さんが書いた文章が新聞の雑誌の広告で見たのですが、それがどの雑誌の何号だったか失念してしまって、あとから見たくても探せないのですが、そんなときに浅田さんのことなら何でも分かるホームページがあるとすごく助かると思ったものですから。もし、そのようなホームページが存在するのなら、教えていただければ助かります。

 最後に、私たちは、浅田さんの親友の坂本龍一(の音楽・思想)に興味がありまして、ニューヨークにいる彼に是非とも一度メールを出したいと希望しているのですが、浅田さんは彼のメールアドレスを(ご存じでしょうから)私たちに教えてもらます?
もちろんファンレターのつもりはありません。浅田さんに書いた今日のメールのようなものを書くつもりです。今や、「自閉・無法の森」に堕している自由の森にとって、浅田さんと同様、「世界の中で生きていこうとする」彼のように人物とも何かしらのコミュニケーションができることがすごく励みになるものですから。

 ここまで長々と読んでいただき、ありがとうございました。 

                「自由の森NGOホームページ」編集委員
                (文責:柳原敏夫 E-mail daba@fa2.so-net.or.jp)

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