11.12/01
かつて、黒澤明は、60年代の半ば、日本映画の危機に直面して、次のように語った。
日本映画の危機が叫ばれているが、それを救うものは、映画を創る人々の情熱と誠実以外にはない。
私は、この「赤ひげ」という作品の中にスタッフ全員の力をギリギリまで絞り出してもらう。そして映画の可能性をギリギリまで追ってみる。
しかし、黒澤明は、その後、日本映画の危機を救っただろうか。むしろ、彼自身もまた、晩年、創りたい映画を作れないところまで追い詰められていったのではないか。
確かに、映画の危機を克服するためには、映画を創る人々の情熱と誠実が不可欠である。しかし、それは必要条件であっても、十分条件を満たしていない。
黒澤明に欠けていたのは、映画再生のための生産と流通のシステム構築という観点である。
しかし、彼にこうした観点がなかったことを別段非難することはできない。当時、そんなことをまともに取り組む可能性などどこにもなかったのだから。
しかし、今、状況は劇的に変化した。それは、インターネットの出現である。
この恐るべき道具を十二分に使いこなせたなら、今まで考えもつかなかった方法で、システム構築と取り組むことができる。その最良の例が、Linuxである。
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