批評空間社の設立手続でのやり取り(00年5月17日〜6月1日)

同じく、批評空間社の設立手続でのやり取り1の続きです。

7.3/03


内藤さん→私:メール(5.17/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について

柳原さん

メールありがとうございました。資金プールに関するお答えは大変よく分かりました。それを理解した上でなお、いくつか、疑問点もあるのですが、それらは後で箇条
書きで僕の疑問点を並べるときに述べさせていただきます。

責任について
「責任」に関する僕の考えをその前に、もう一度申し上げておこうと思います。
柳原さんがおっしゃるようにコミュニズム(コミューンではありませんので)の精神と出資者への無限責任を回避したいという現実との間に、明白な矛盾がみられるというのは全くその通りです。
そして、それは回避できないし、その矛盾は今後とも避けられない。問題は、その矛盾とどう付き合っていくのか、ということなのだろうと思うのです。

生産組織をつくるのである以上(株式会社の倒産にみられる会社更生法の適用などの場合に株主の有限責任とは別に会社が抱えた負債額の支払い義務に関する規定は厳密には法的にどうなっているのかはやはり是非知っておきたいところですが)、誰かが無限責任を負わねばならないことは承知しています。
しかし、その無限責任――この場合は負債の支払い義務だけに限定しますが――は、あくまでも実際に経営をしたものが負うべきで、大小さまざまな額を善意で出資してくれた、実際には経営に参画することもない方々(権利上経営参画権を有していても)に連帯で負わせるというのは、絶対にしてはいけないし、そういうことであれば柄谷・浅田という象徴的な名前のもとに人を集めるということはむしろ止めるべきだと思っているのです。
従って、無限責任を連帯で負うのは原則として僕に限定するべきだと考えます。

組合員とはパートナーであり、組合とはパートナーシップであるから、責任も連帯で負うべきである。こうした原則こそが、組合員一人一人が積極的かつ自発的に組合の活動に参加する自覚を促す制度的な支柱でもあるし、組合とはもともとそういうパートナーシップ活動の場である、という法的理念の建前はよく分かります。
しかし、実際には出資を約束してくれている数人の著者たちは、経営のことなど何も知らず、普段は大学の教師やもの書きや芸術家として多忙な日常を送っている人たちであって、彼らに「倒産ないし解散」の事態に直面した場合、「個人財産の差押さえ」の可能性があるということが始めから分かっている制度を、柄谷・浅田の「信用」を立てに適応するのはどう考えてもよくない。

以上が、責任に関する僕の所見で、これはコミュニズムがどうのこうの、柄谷行人の思想が目指す高邁さがどうのこうのという以前の段階に属する絶対的な基本姿勢であって、この点は仮に柄谷さんがどう考えていようと了解していただくつもりです。

従って、僕以外の出資者には「有限責任」の法的適応がなされる組織を考える、ということにしたいと思います。ですから、法律をさしあたりカッコに括って言ってしまえば、組織形態としてはいわゆる事業協同組合が望ましく、複数の出資者を募って同組合を起ち挙げる。ただし、僕以外の出資者は「有限責任組合員」とする。
「超」法律的なことばかり言って、申し訳ありません。柳原さんを困らせたいというサド趣味はありませんから、ご容赦ください。

ただ、この「超」法律的な要望が無理であれば−−充分、無理ということはあるわけですから−−、投資事業有限責任組合(投資者)→株式会社(投資先)という形態か単なる会社(株式会社ないし有限責任会社)という形態を選択するということも念頭において、そろそろ具体的かつ現実的に決めていきたいと思っています。

質問項目
以下に、自分自身の疑問点を整理する意味も含めて、僕が知っておきたい項目を箇条書きにします。以前からの疑問点との重複もありますが、それも含めます。また、投資事業有限責任組合は「責任組合」に、株式会社をA社とします。

Q「事業協同組合」(「企業組合」も含む)の組合員は全員が無限連帯責任を負うことになるのか

Q「事業協同組合」のカテゴリーに分類される「企業組合」は、「中小企業等協同組合法」の規定を読む限り、制約が多すぎて(出資者たる組合員の半数――記憶なので未確認――以上は組合の企業業務にいわゆる従業員として参画しなければならない、等々)、現実的な選択肢だとは思えなくなってきたが、「企業組合」以外に、「事業協同組合」のなかで組合員が事業主である協同組合ではなく、個人によって設立可能な協同組合(出版事業のようないわゆる営利事業を許容する)はないか

Q「事業協同組合」は金融機関からの融資が受けられるのか。また、受けられる場合、都市銀行のような大手ではなく、中小企業の金融機関に限定する、といった制約はあるのか。「責任組合」に関しても同じ点はどうなっているのか。

Q「事業協同組合」も「責任組合」もいわゆる内部留保(事業収益から得られる組合財産の内部蓄積)はしても良いのか、あるいはどの程度許容されるのか。

Q「責任組合」は「企業組合」やその他の「事業協同組合」への出資が認められているのかどうか

Q「責任組合」の無限責任組合員(責任組合の業務執行を兼ねる)が投資先のA社の経営者(取締役、代表取締役)を兼ねることは可能であるかどうか

Q責任組合はその投資先が(事実上)一つであるということが認められるのか、あるいは一度、投資事業を行ってから長期間投資事業を行わないという事態が続いても、特に問題はないのか(補足:むろん、成立した責任組合はそれがうまく機能すれば、A社以外の株式会社以外であっても、それが「中小企業」に分類される出版社であれば、投資を行うということは、この責任組合のそもそもの法律主旨に沿った事業展開であるのだからそれはそれで好ましいだろうし、またそうすることで新たな風を出版界に導き入れる可能性すらあるが、実際には、そう頻繁に「投資」ができる潤沢な資金があるとは思えず、加えて最初の質問の「兼任」が難しい場合、責任組合の組合員たる批評家や作家などに業務執行を担当できる人がそういるとは思えないことを念頭に置いている)

Q有限責任組合はその成立にあたって同組合が入手した資金の全額をA社に投資することは可能か。可能でない場合、何パーセントまでが許容されるのか。(補足:そもそもこの「責任組合」はA社ないしそれに類した出版事業を行う事業協同組合を設立するための資金調達方法の探索から柳原さんに教示されたものですが、「全額」出資が可能でない場合は、必要資金の調達額が変ってくることを念頭に置いている)

Q株式会社においていわゆる「倒産」となった場合、株主は既に出資した株式相当額を失うだけで済ませることが出来るが、実際の負債額はでは誰が支払うのか。仮に、株主でもあり経営者である人物がいると仮定するとき、彼は株主として負う有限責任とは別に、経営責任として事実上、無限責任を負いのか。その場合、彼の個人財産が全て差し押さえられても債権者に支払いきれない分は、法的にはどう処理されるのか。彼に対して将来に亙って可能であると推定される一定限度額にその債務額が減額される契約のような取り決めが行われたりするのか。「有限会社」に関しては同じ点に関してどうなのか。(補足:いずれにしても家族がある自分の人生に関わる可能性のあることなので、しっかり知っておきたいと思います。太田出版から実際の倒産した会社の経営者だった人の書いた実録手記である『債権者会議』という本が出ているのですが、これを読んでも、債務者の悲惨な状況とその胸のうちが人情に訴えるように書かれているだけで、法律上の手続きに関する記述がないのです)。

以上、現在僕が抱えている疑問点を箇条書きにしましたが、むろん、全て柳原さんに手放しで調べてもらおうというのではなく、僕自身、「中央会」その他へ連絡などして調べてみるつもりですし、柳原さんのお時間があるときであれば、通産省中小企業庁に一緒に同行願って、直接に担当官に聞いてみたいと思っております。

‥‥

内藤裕治拝

私→内藤さん:(5.18/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について(とりあえずのリプライ)

内藤さんへ

メール、ありがとうございました。

なかなか長文のボリュームタップリのメールですので、肝心の質問等については、改めて回答させて下さい。
それで、とりあえずお伝えしておきたいこととして、
‥‥
2、共同経営における責任の問題については、基本的に内藤さんの考えに異論ありません。無限責任が生じるような関係については、(もし仮にそれを採用するしかない事態に至った場合でも)参加者には事前に十分な説明が必要であり、また、それが事実上不可能な広範な人たちに対してそれを呼びかけるのは結果的に詐欺にひとしいことであり、やるべきではないと思います。

 ただ、あれですね、責任ということを、実は
(1)経営参加の面と
(2)債権債務の金銭面でのこと
とに分けて考えていった方がいいですね。たとえば、書き手は何も必ずしもお金を出資する必要があるわけではないので、単に書き手として継続的に雑誌の原稿執筆に責任を持って関わっていくこと(上の(1)の面)も十分可能ですよね。その場合には、そもそも出資をしていないので、(2)の点で金銭面での責任を負うこともない。他方、批評空間の読者などは、(2)の面で有限責任の限度で出資して協力したいと考えている人は多いと思いますが、しかし、それ以上、(1)の面で原稿執筆など雑誌運営にまで関わることはない。
                ↓
そういうのをうまく組み合わせる方法というのは、今、思いつくのは、
(1)の点は、殆どお金を用意しないで、組合を作るか有限会社を作る。そこには、書き手なり雑誌運営に積極的に関わろうという人たちが組合員なり(有限会社)の株主なりの資格で参加する。たとえば、組合員は何も出資はお金でなくてもいいわけで、自分の知的労働を出資するというやり方ももいいのです。

では、お金を用意しないで、どうやって組合や会社を運営するのか、というと、そこで登場するのが次の投資事業有限責任組合で、ここから融資をうけるのです。そして、こちらの組合や会社の経営は負債を負うようなことにならないように、もしそうなる危険がある場合には、投資事業有限責任組合が極力応援して、負債を作らない。最悪の場合には、投資事業有限責任組合が用意できるお金を全額出資して(投資事業有限責任組合はスッテンテンになっても)、こちらの組合や会社の負債を作らないようにする。

(2)の点は、例の最近始まったばかりの投資事業有限責任組合法を活用して、投資のための組合を作る。それは有限責任で投資できますから、熱心な読者なりがそこに組合員として投資できる。但し、この組合の難点は、誰かひとりは無限責任を負う組合員が必要とされていることです、つまりこの組合のリーダー格になる人物を無限責任を負う組合員としているわけです。ですが、ここも或る種の対策が可能であって、たとえば、内藤さんがこの無限責任を負う組合員になるのです。但し、内藤さんは、ご自分名義の資産は極力持たないようにして、資産は全部奥さんか家族の名義にしておく。そうすれば、万がの万が一のことがあって、内藤さんの個人資産までに責任追及が及ぶことがあっても、追求されるものがないから心配ない(^_^)。
             ↑
以上は、まだ思いつきの段階で、もっと詰めていかなければなりません。しかし、思いついたアイデアが忘れないうちにメモしておこうと思い、書き留めておきました。
‥‥
では、明日にでも、中身についてのコメントを書きますので。

とりいそぎ。

内藤さん→私(5.18/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について(とりあえずのリプライ)

柳原さん

有益な提案ありがとうございます。

2のご提案には基本線で賛成です。大変刺激的な提案だと思います。僕自身、興味がそそられます。いくつか疑問点もありますが、僕自身それらを整理してからメールしたほうがいいと思うのに加えて、柳原さんからの追加メールを見てからのほうが、その整理がさらにしっかりすると思うので、さしあたり、それを待たせていただきます。
‥‥
われわれのパートナーシップで、社会に対して能産的なものをもたらす可能性に満ちた良質の組織を作りましょう。

以上、さしあたりの返信まで。

内藤裕治拝

私→内藤さん(5.18/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について(とりあえずのリプライ)

内藤さんへ

メール、ありがとうございました。

> 2のご提案には基本線で賛成です。大変刺激的な提案だと思います。僕自身、興味が
> そそられます。

そうですか、そうか、そう言っていただいて、天にも昇る気持ちです(^_^)。

というのは、私自身、このアイデアを映画制作にも応用できる筈だというので、(法の解釈を商売にする筈の弁護士業から脱線して)もっかあれこれ夢中になって考えていたところだったのです(^_^)。
この前も、NYで柄谷さんにこの話をして、彼からも「今は、そういう範例を実際に作ってみせるのが大事なんだ」と激励されましたし。

しかし、実はこれは私の独創でも何でもなくて、私の知り合いのマイナーなレコード会社のアイデアなのです。
ここはかつて、ニューミュージックなどで名をはした会社だったのですが、その後の不況で凋落の途を辿り、破局寸前のところまで行って、そこから、自分たちの生き残る道は、クリエーター・アーティスト本位に、彼らが自主的に作りたい音楽を作れるインフラを整備するしかないと悟って、それで、私が説明したアイデアを昨年、強引にも実現してしまったのです(^_^)。もっとも、その当時は、投資事業有限責任組合法が未制定だったのですが、必死に考え抜いて、とうとう、従来の民法の組合と商法の匿名組合を巧みに組み合わせて、有限責任で出資を募るという方式をでっち上げてしまったのです。

それで、この1年間、必死になって、業務委託(アウトソーシング)してくれるクリエーター・アーティストたち(実際は、プロデューサーとアーティストで作る小さなプロダクションですが)を募って、経営をやってきまして、こうした努力の甲斐あって、当初、6社のプロダクション等でスタートしたのが、1年後には36社に増え、アーティストもSILVAというヒットが生まれ、先月には発売1ヶ月ちょっとで50万枚の売上となったヒット作品(ハイスタンダードというアーティスト)も出ています。

それで、内藤さんが興味を持ってくれたので、今から、この会社のシステムを説明した資料を郵送で送ります(柄谷さんにも見せて、興味を持ってもらったものです)。詳細は、資料に書いてありますが、
音楽の場合は、出版でいう書き手=クリエーター・アーティストは、通常、自分のプロダクションという会社組織を持っているので、そこの各会社が集まって、レコード制作・流通の事務処理を専門に担当する事務処理会社を立ち上げまして、そこが、共同経営者の各プロダクションから業務の委託を受けて、レコードの制作・流通にかかわる膨大な事務処理をこなす。
それで、各プロダクションは、自分たちが本当に作りたい質のいい音楽制作に専念できるようにする。
しかし、質のいい作品を制作したら、その作品の著作権をクリエーターが確保できるようにすることが必要であり、そのためには、お金を出すところが権利も持っていってしまう映画や音楽の世界では、お金の工面に工夫が必要となる。そこで、共同経営の中心となった会社が中心となって、そのためのファンドを立ち上げる。その際の条件が次の2つでした。
(1)出資者には有限責任しか負わせない(←前述した通り、投資事業有限責任組合法がなかった当時、このために大変苦労して、細工を施したのです)
(2)出資者は、投資した甲斐があるように利益の分配を心がけるが、しかし、著作物に関する権利は一切持てない(←当初、出資者たちは、世の常識を覆すようなこの提案にビックリしたようですが、しかし、有利な収益分配方法を提示されたこともあって、最終的にはこれを飲んだ)。

音楽と出版のちがい、また、ファンド設立目的のちがいなど、違いもありますが、クリエーターが自立して作品を制作・流通できるようなシステムを作ろうとして点で大いに参考になるものがあります。また、この会社の志とその経験は、なかなか参考になるものがあって、いつでもお話を聞きに行けますので。
‥‥

では、では。

私→内藤さん(5.23/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について

内藤さんへ

スミマセン、先日のメールの後、質問に対する回答のことがずっと頭にあったのですが、急の用件が重なって返事が遅れて失礼しました。

以下、残りの質問事項だけ、今分かる範囲でお答えします。

> 生産組織をつくるのである以上(株式会社の倒産にみられる会社更生法の適用などの
> 場合に株主の有限責任とは別に会社が抱えた負債額の支払い義務に関する規定は厳密
> には法的にどうなっているのかはやはり是非知っておきたいところですが)、誰かが
              ↑
ここのカッコの部分の質問ですが、ここで書かれたような「株主の有限責任とは別に会社が抱えた負債額の支払い義務」は株主にはありません。株主は、自分が出資した金額だけゼロになるというリスクを負うだけで、それ以上、会社の負債について会社債権者から責任追及されることはありません。これを称して、株主有限責任と呼びます。


> 質問項目
> 以下に、自分自身の疑問点を整理する意味も含めて、僕が知っておきたい項目を箇条
> 書きにします。以前からの疑問点との重複もありますが、それも含めます。また、投
> 資事業有限責任組合は「責任組合」に、内藤・杉浦の株式会社をA社とします。
>
> Q「事業協同組合」(「企業組合」も含む)の組合員は全員が無限連帯責任を負う
> ことになるのか

そうです、誰だれは例外的に有限責任であるといった特別の規定がない限り(私自身、今までそういった規定を見たことがありませんが)、原則とおり、全員が無限連帯責任=会社の債務について、組合員は、会社債権者に対し、出資した金のみならず、組合員個人の全財産をもって責任を負います。


> Q「事業協同組合」のカテゴリーに分類される「企業組合」は、「中小企業等協同
> 組合法」の規定を読む限り、制約が多すぎて(出資者たる組合員の半数――記憶なの
> で未確認――以上は組合の企業業務にいわゆる従業員として参画しなければならな
> い、等々)、現実的な選択肢だとは思えなくなってきたが、「企業組合」以外に、
> 「事業協同組合」のなかで組合員が事業主である協同組合ではなく、個人によって設
> 立可能な協同組合(出版事業のようないわゆる営利事業を許容する)はないか

残念ながら、ないようですね(^^;)。
但し、民法の組合ならそういうこと=組合員が事業主である協同組合ではなく、個人によって設立可能な協同組合が可能ですから、それを選択することはできます。
もっとも、私が分からないのは、民法の組合と、中小企業等協同組合法の企業組合などではどれだけ違いがあるのかということです。これは役所に行って確認した方が早そうです。

なお、内藤さんは、
> Q「事業協同組合」のカテゴリーに分類される「企業組合」は

という言い方をされていますが、厳密には、「企業組合」は「事業協同組合」と並ぶ、中小企業等協同組合の中のひとつの形態という位置づけです(3条)。念のために。


> Q「事業協同組合」は金融機関からの融資が受けられるのか。また、受けられる場
> 合、都市銀行のような大手ではなく、中小企業の金融機関に限定する、といった制約
> はあるのか。「責任組合」に関しても同じ点はどうなっているのか。

制約があるかどうか聞いたことがありませんね。
個人でも、大手銀行から融資を受けられる以上、「事業協同組合」がこれを受けられないというのはおかしな話ですが、これも念のために、役所に確認した方が早いですね。

また、「責任組合」は本来投資を目的として創立するものですから、それが銀行から融資を受けるというのはおかしなことで、その趣旨から言うと、融資は一切できないのではないかと思うのですが、これもまた役所に確認した方が早いですね。


> Q「事業協同組合」も「責任組合」もいわゆる内部留保(事業収益から得られる組
> 合財産の内部蓄積)はしても良いのか、あるいはどの程度許容されるのか。

条文を探してみたのですが、あいにく、明確に書いてある条文が見つかりません(^^;)。
余裕金(57条の5)や剰余金(58条)といった条文がある以上、内部留保自体は出来ると思うのですが、問題はその限界です。スミマセン、これもまた役所に確認しましょう。


> Q「責任組合」は「企業組合」やその他の「事業協同組合」への出資が認められてい
> るのかどうか

これは投資事業有限責任組合法3条1項6号ロに投資先に「組合」とあるのですが、これが「企業組合」やその他の「事業協同組合」まで含むのか、という問題です。この法律の解説には、投資事業有限責任組合しか例が挙がっていないので、困るのですが、恐らく、含むのだと思うのですが、念のため、役所に確認しましょう。


> Q「責任組合」の無限責任組合員(責任組合の業務執行を兼ねる)が投資先のA社の
> 経営者(取締役、代表取締役)を兼ねることは可能であるかどうか

以下の質問もそうですが、こういったことは、特に禁止の規定がない限り、契約自由の原則で自由にやっていいと思って下さい。
そこで、ざっと条文を読む限り、兼任禁止を定めた条文がないので、可能だと思うのですが、これまた役所に確認したいと思います。


> Q責任組合はその投資先が(事実上)一つであるということが認められるのか、

とくに、これを禁じる規定がない以上、いい筈です。


> あるいは一度、投資事業を行ってから長期間投資事業を行わないという事態が続いて
> も、特に問題はないのか(補足:むろん、成立した責任組合はそれがうまく機能すれ
> ば、A社以外の株式会社以外であっても、それが「中小企業」に分類される出版社で
> あれば、投資を行うということは、この責任組合のそもそもの法律主旨に沿った事業
> 展開であるのだからそれはそれで好ましいだろうし、またそうすることで新たな風を
> 出版界に導き入れる可能性すらあるが、実際には、そう頻繁に「投資」ができる潤沢
> な資金があるとは思えず、加えて最初の質問の「兼任」が難しい場合、責任組合の組
> 合員たる批評家や作家などに業務執行を担当できる人がそういるとは思えないことを
> 念頭に置いている)

これもまた、問題ない筈です。要は、投資した後は、投資先が頑張って営業するだけで、投資側は黙って見守るしかないので、これが普通の筈です。


> Q有限責任組合はその成立にあたって同組合が入手した資金の全額をA社に投資する
> ことは可能か。可能でない場合、何パーセントまでが許容されるのか。(補足:そも
> そもこの「責任組合」はA社ないしそれに類した出版事業を行う事業協同組合を設立
> するための資金調達方法の探索から柳原さんに教示されたものですが、「全額」出資
> が可能でない場合は、必要資金の調達額が変ってくることを念頭に置いている)

「全額」出資を禁じるような規定はザッと見たところ、見当たらないので、可能だと思うのですが、念のため、役所にチェックしましょう。


> Q 株式会社においていわゆる「倒産」となった場合、株主は既に出資した株式相当
> 額を失うだけで済ませることが出来るが、実際の負債額はでは誰が支払うのか。仮
> に、株主でもあり経営者である人物がいると仮定するとき、彼は株主として負う有限
> 責任とは別に、経営責任として事実上、無限責任を負いのか。その場合、彼の個人財
> 産が全て差し押さえられても債権者に支払いきれない分は、法的にはどう処理される
> のか。彼に対して将来に亙って可能であると推定される一定限度額にその債務額が減
> 額される契約のような取り決めが行われたりするのか。「有限会社」に関しては同じ
> 点に関してどうなのか。(補足:いずれにしても家族がある自分の人生に関わる可能
> 性のあることなので、しっかり知っておきたいと思います。太田出版から実際の倒産
> した会社の経営者だった人の書いた実録手記である『債権者会議』という本が出てい
> るのですが、これを読んでも、債務者の悲惨な状況とその胸のうちが人情に訴えるよ
> うに書かれているだけで、法律上の手続きに関する記述がないのです)。

実際の負債額は、会社債権者が負担する=つまり、回収不可能として我慢することになります。
もっとも、商法は、266条の3に取締役に個人的な責任を負わせていて、それでもって、回収不可能となった会社債権者が取締役に責任追及することが往々にしてあるのです。ただし、これが適用されるのは、取締役が営業について悪意重過失がある場合で、よほどの経営怠慢がある場合にかぎられます。また、この規定は、有限会社の場合にもあります(有限会社法30条の3)。
         ↑
以上の意味で、決して、経営者は法的に必然的に経営責任として無限責任を負うわけではなく、原則は株主が出資した会社財産だけで責任を負い、例外的に、経営怠慢がある場合に取締役個人が責任を負うのです。

また、株式会社にせよ、有限会社にせよ、取締役個人が責任を負う場合、その個人財産がすべて追求されますが(といっても、その家族名義の財産まで追求されることはありません)、

> 彼の個人財産が全て差し押さえられても債権者に支払いきれない分は、法的にはどう処理される
> のか。

この点は、個人破産の場合と同様です。つまり、個人の全財産をもってしても負債を支払えない場合い、弁護士に入ってもらって任意整理(一部カット、残金を長期分割という方法で全債権者と合意する)するか、裁判所に申し出て、破産宣告をもらって、それで負債をチャラにして再出発するかのいずれかです。この点で、そう心配することはありません。

ザッと以上です。

遅くなって失礼しました。

何か疑問点がありましたら、ご連絡下さい。

では、また。

内藤さん→私(5.23/00)

Subject: Re: 批評空間の今後の体制について

柳原さん

多忙な中をぬってお返事いただきありがとうございます。基本的に明確なお返事で、いろいろはっきりしてきました。残った疑問点などは役所などに聞くとして、そのなかでも特に確認したいのは

Q中小企業等協同組合法に定められている組合と民法で定められている組合(こちらの規定は僕は全然知らないのですが、営利活動をそもそも想定しているのでしょうかね)の差異

Q各種「組合」の内部留保の限度枠

Q投資事業有限責任組合の投資先としての「組合」に、われわれが想定している組合が含まれるか、どうか、

というところですね。

さしあたり返信まで。

内藤裕治

内藤さん→私(5.30/00)

Subject: Fw: 11日

柳原さん

今日の結果を踏まえて、X氏に報告のメールを出しました。確認の意味も含めて、柳原さんに転送しておきます。

内藤裕治

----- Original Message -----
Subject: 11日

‥‥
> 本日、柳原さんと通産省中小企業庁に行って、当該法の担当官に直接話を聞いて来ま
> した。その結果、認識の間違っていたものまで含めて、法的な疑問点はほぼクリアー
> になったので、自分で整理する意味も含めて、お知らせしておきます。
>
> ◆投資事業有限責任組合(以下、「投資組合」と略)が投資できるのは、法律で中小
> 企業に分類される株式会社と若干数の投資組合のみで、有限会社やその他の組合(事
> 業協同組合、企業組合、民法で規定される組合)には一切投資できない
>
> ◆投資組合はあくまでも「投資」ないしそれに準じる業務(例の本の23ページの規
> 定)がその業務であって、「融資」は行ってはならない
>
> ◆投資組合は一切の内部留保を行ってはならない。収益は全額、組合員に配当金とし
> て返還しなければならない。ただし、組合員は各自の判断でその配当金を再度、投資
> 組合に出資することは可。また毎年度、公認会計士によるチョックを必ず受けなけれ
> ばならない(従って、杉浦くんが言っていたように投資組合が大きな負債を負うとい
> うことは現実的にはそうそうないと思われる)
>
> ◆投資組合は銀行から融資を受けることは出来る。特にその融資に際しての限定はな
> い。ただし、責任組合には法人格はないので、融資を受ける場合は、通常、業務執行
> 者である無限責任組合員個人の名義に対してなされる。従って、その債務も最終的に
> は彼が単独で負う
>
> ◆投資組合の無限責任組合員とその出資先の株式会社の代表取締役社長が同一人物で
> あることは可
>
> ◆投資組合がその資金を全額、一つの株式会社に投資することを妨げる規定はない。
> ただこの場合は、投資組合設立時に組合員同志が取り結ぶ契約書に、そういうことが
> ある旨、明記しておくと良い
>
> ◆投資組合は登記前でも組合員による契約をもって、設立の要件とみなされ、同組合
> は法人格をもたない。この点は、民法に定められているいわゆる任意契約によって生
> じる組合と同じ。異なる点は、後者の組合員は原則として、連帯無限責任組合員であ
> るという点である。他方、投資組合や民法の組合とは異なる「中小企業等協同組合
> 法」に規定されている事業協同組合や企業組合は法人格をもち、責任については組合
> 員はその出資額を限度とするのであって、この点は株式会社の株主と同様である。
>
> ◆企業組合の内部留保に関して:
> 立ち上げ当初の出資金相当額(この額に上限・下限はない)を維持するのに必要な額
> を事業収益から「留保」にまわし、それを超過する額は組合員に配当するのが好まし
> いが、特に法的な規定や罰則があるわけではないく、業務執行者の倫理的判断に基本
> 的に委ねられている
>
> ◆企業組合の出資総口数の過半数は、組合の行う事業に従事する組合員が保有しなけ
> ればならない
>
> 以上の点から出てくる暫定的な結論
>
> 1.企業組合は、投資組合の投資先に該当しないこと、また企業組合単独として業務
> を立ち挙げることを考えた場合、上記最後の規定が大きな制約となって、複数の出資
> 者を想定しにくいこと、また今後に事業の拡大に伴って従業員を増やしたいときに
> も、それが出来ないことがほぼ確実であるため、企業組合という選択肢は捨てる
>
> 2.従って、出版事業を行う組織として組合形式を採用することは、現状の法律では
> 不可と判断する(企業組合以外のいわゆる事業協同組合は「事業主」による「協同」
> 組合であるため、われわれの事業には採用不可である。また、民法上の任意契約組合
> は組合員は全員無限責任を連帯で負こと、また営利事業体としては法人格を持たない
> 点などから、好ましい選択肢とは言えない)
>
> 3.従って、投資事業有限責任組合と株式会社のカップリングでの事業展開を考える
> 方向で計画案を具体化したい
>
> 4.3に関する素案:
> A社の株主は内藤、X氏、Y氏、V氏、W氏とする。
> 右5氏による出資額の総額は会社の設立に要請される下限額、300万円とする。
> 右金額以上の出資額はB組合からの投資を期待する。双方を合計した出資
> 総額は約3000万円を期待するが(これは別途算出するとして)、A社の大株主は実際
> に複数の組合員によって構成されるB組合なので、A社の経営基盤の「公共性」を社
> 会的に示すのにも適していると思われる。
>
> なお、4の提案に関して
>
> あ)B組合(組合員上限定員49名)からの出資を加えて3000万円ないし必要出
> 資額が集まらない場合は、同C組合(定員は同じく49名)の設立を考えることも検討する。
> ただし、それ以上に不特定多数の人からの出資は考えない。
> できるだけ、B組合のみで必要出資金を集めるのが好ましい。
>
> い)A社の「社員」(法律用語としての)の出資総額が300万円以下でも可能かど
> うか(要するにB組合の投資を前提とせずに、A社が単独で株式会社の成立要件を満
> たしているのでなければならない、かどうか)が、新たな疑問点として残ったので、
> この点は再度調べる。

私→内藤さん(6.1/00)

Subject: Re: Fw: 11日

内藤さんへ

詳細なコメント、ありがとうございました。

> 今日の結果を踏まえて、X氏に報告のメールを出しました。確認の意味も含めて、
> 柳原さんに転送しておきます。

私の感想、大きくいって2点ありまして、
1、内藤さんのコメントにある通り、法的な疑問点がほぼ解明したこと。その結果、その結論を踏まえて、或る程度、方向性が見えてきたこと。
2、但し、法的な問題点が詰まってきたところで、今後めざす運営方法について、再度、理念と現実とのすりあわせをギリギリまで突き詰めておきたいということ。
です。

2について何を言いたいか、先に結論を言いますと、
(1)、まずお金の問題ですが、
お話を聞いていると、スタート時において、よく知らない人たちからの出資に頼らず、お互いによく理解しあった(その意味で少数の)者からの出資でスタートしたいという意向がありますよね。そうしたとき、有限責任の投資組合を結成しなくても済むのではないかということが考えられます。つまり、こうした少数の出資者の人たちに、一度、有限責任の投資組合に出資してもらって、その上で、投資組合から批評空間を出版する株式会社の株式を保有するのなら(出資者→投資組合→株式会社)、いっそのこと、最初から、株式会社の株式を保有してもらったほうが(出資者→株式会社)単純明快なのではないか、と思ったのです。

もっとも、そうするとそもそも、ここで投資組合を介在させる意味がどこにあるのかということですが、それは、株式会社の株式を保有するとはいえ、個々の出資者が保有するのとは違って、投資組合の名前で保有することによって、個々の出資者にあれこれ口を挟ませず、投資組合の無限責任組合員(である内藤さんたち)の意思で株主総会などを運営できる点に、メリットがあるのではないかと思いました。しかし、これに対し、いや、信頼できる少数の出資者の意思をむしろ会社運営に反映させた方がいいのだというのであれば、わざわざ投資組合なんか介在させないで、直接、株式会社の株主になってもらった方がいいのです。
そういった意味で、今回のケースで、改めて、投資組合結成の必要性を考え直しています。

(2)、経営の問題について、
 それでもし、投資組合を結成しないという方向で考えた場合、それに伴って、出資金の額に応じて発言権を持つ株式会社ではなく、1人1票の経営の理念に立つ「組合員のための、組合員による、組合員の」協同組合(ここでは企業組合)の可能性がダメなのかどうか、再度、ギリギリ追求しておきたいと思うのです。

まず、株式会社の設立ですが、これに要する最低の資本金は1000万円です(300万円は、有限会社の設立の場合です)。つまり、最初に、1000万円揃わないと株式会社を立ち上げることはできないのですが、で、その際たとえば、柄谷さんなんかがポンと500万くらい出してくれると、今度は彼の発言権がそれだけで50%となるという1人1票の経営の理念からは大きくかけ離れてしまう面白くない現象が生じてしまいます(^^;)。


それで、企業組合の可能性ですが、

> 企業組合の出資総口数の過半数は、組合の行う事業に従事する組合員が保有しなけ
> ればならない

という点ですが、ここはなお、法的に詰める必要があります。つまり、内藤さんはいいとしても、柄谷さんや浅田さんなどが行なう編集活動が、他方で大学の研究者でありながら、この企業組合の「行う事業に従事する」組合員として評価されるかどうかの点です。

また、協同組合法9条の11に、企業組合に関し、
1、組合員の3分の2以上が、組合の行う事業に従事していなければならない(1項)
2、組合の行う事業に従事する者の2分の1以上は、組合員でなければならない(2項)
   ↑
これについても、
上と同じく、1項と2項の「組合の行う事業に従事」とは、どこまでの関与を言うのかどうか。具体的には、別の仕事を持っていて、組合の事業にも関わるという場合は一切ダメなのかどうか。もし可能とした場合、どこまで関与していれば可能なのかどうか。
また、2項の「組合の行う事業に従事する者」というのは、どこまでを含むのか。契約社員やアルバイトも含むのかどうか。
   ↑
この点については、電話で、昨日のあんちゃんか、中央会に問い合わせて確認してみるという手はあります。
なお、私が、これにこだわるのは、もともと法律の極意は臨機応変にありますから、使い方次第では、企業組合でも十分やれるのではないか、そうだったら、それをもう少し追求しておきたいと思ったのです(もっとも、お金を集める方法については、投資組合を使えないので、少数の人たちからかなりの金額を集めなくてはならないという困難さがありますが)(注1)。

以下、Xさんに書いたコメントについて、私の簡単なコメントを。


> > 投資組合は一切の内部留保を行ってはならない。収益は全額、組合員に配当金とし
> > て返還しなければならない。ただし、組合員は各自の判断でその配当金を再度、投資
> > 組合に出資することは可。また毎年度、公認会計士によるチョックを必ず受けなけれ
> > ばならない(従って、杉浦くんが言っていたように投資組合が大きな負債を負うとい
> > うことは現実的にはそうそうないと思われる)

もともと投資組合の目的は投資するだけで(債権や株式をもつだけで)、債務を負うことはしませんから、その意味で、投資組合が大きな負債を負うことはありません。


> > 企業組合の内部留保に関して:
> > 立ち上げ当初の出資金相当額(この額に上限・下限はない)を維持するのに必要な額
> > を事業収益から「留保」にまわし、それを超過する額は組合員に配当するのが好まし
> > いが、特に法的な規定や罰則があるわけではないく、業務執行者の倫理的判断に基本
> > 的に委ねられている

企業組合の定款の実例などを見ますと、株式会社と同じような感じで、組合員が有限責任なので、組合財産が危うくならないように、むしろ内部留保を要請している扱いです(58〜59条)。

> > 以上の点から出てくる暫定的な結論
> >
> > 1.企業組合は、投資組合の投資先に該当しないこと、また企業組合単独として業務
> > を立ち挙げることを考えた場合、上記最後の規定が大きな制約となって、複数の出資
> > 者を想定しにくいこと、また今後に事業の拡大に伴って従業員を増やしたいときに
> > も、それが出来ないことがほぼ確実であるため、企業組合という選択肢は捨てる

今後に事業の拡大に伴って従業員を増やしたいとき→そのときのやり方は実はいろいろありまして、たとえば、1雑誌1企業組合くらいの積りで、事業の拡大に伴って、企業組合を増やしていく方法もあります、その分、内藤さんがあちこちの企業組合の代表になるのでしょうが(そんなことは、株式会社でもザラにあります)。


>> 4.3に関する素案:
>> A社の株主は内藤、X氏、Y氏、V氏、W氏とする。
>> 右5氏による出資額の総額は会社の設立に要請される下限額、300万円とする。
>> 右金額以上の出資額はB組合からの投資を期待する。双方を合計した出資
>> 総額は約3000万円を期待するが(これは別途算出するとして)、A社の大株主は実際
>> に複数の組合員によって構成されるB組合なので、A社の経営基盤の「公共性」を社
>> 会的に示すのにも適していると思われる。

A社を設立する時の株主のことを発起人といいますが、発起人に内藤さん、X、Y、V、Wとするだけではなく、ここにB組合も名を連ねることができる筈です(B組合を先に作ってしまえばいいのです)。
そのほうが、最低資本金1000万円をクリアするのも簡単ですし、あとからB組合に株主になってもらうのも、手続上、何かと面倒くさい(誰かが先に株を持っていて、それをB組合に譲るという形式を取る)のではないかと思います。
なお、A社の株主は、株式を全員同じ額(例えば50万円)だけ持つことにして、残りの出資はB組合のほうに出資してもらうと、株式会社でありながら、1人1票の原則に近い運営形態が可能になります。


> > い)A社の「社員」(法律用語としての)の出資総額が300万円以下でも可能かど
> > うか(要するにB組合の投資を前提とせずに、A社が単独で株式会社の成立要件を満
> > たしているのでなければならない、かどうか)が、新たな疑問点として残ったので、
> > この点は再度調べる。

この意味がちょっと不明でした(^^;)。

では、2日に。

内藤さん→私(6.1/00)

Subject: Re: Fw: 11日

柳原さん

早速の返信ありがとうございます。いくつか認識の間違っていたことも指摘していただいて、参考になりました。

企業組合でいく場合の困難さは以下に集約されると思います。

必要な資金を調達するにあたって、不特定の人たちからの調達が困難になること。
例えば、「中小企業等協同組合法」に定められている組合の設立要件では、最低発起
人が四名であったと記憶していますが、これは発起人を含む組合員の誰か一人が、出
資総額の25%を超えて出資してはならない、という規定と相即のものであったはず
です。したがって、必要出資額を集めるために、発起人のだれか一人に高額の出資を
期待すると、その額が出資総額の25%を超えないようにするためには、他の発起人
もそれに対応した金額を出資をしなければならなくなるか、発起人以外に出資をして
もらう組合員の数を増やさなければならなくなりますがこれは「組合員の3分の2以
上が組合の事業に従事しなければならない」という規定から難しい。

従業員の増加など事業の拡大にともなう問題への対処策として、企業組合を複数化
していくというご提案について:

あ)出版物にはその奥付けページに版元の名前が必ず記されますが、基本的に同一の
組織であるにも拘わらず、刊行物の種類によって異なる版元表記がなされることにな
ると、版元としての社会的認知に混乱が生じること、また、取次店などにも版元ごと
に異なった口座を設けるのは極めて困難であること(事実上不可能だと思います)

い)あ)の混乱を避けるため、企業組合Aに後続して起ち挙げた企業組合Bは取次店
に口座を持たないいわゆる企業組合Aの編集プロダクションという体裁にし、口座は
企業組合Aで一括処理し、奥付けには「発行元:企業組合B、発売元:企業組合A」
というスタイルを選択する、ということが考えられますが、これは編集者の一般的な
意識から行って、編集プロダクションよりも発売元である独立した出版社で働きたい
という意向が強いため、仮に企業組合Bのようなものを一つないし、複数作った場
合、そこで働く編集者に恒常的な不満が生じ、結果としてAとそれ以外というヒエラ
ルキーを作ってしまうのではないか、ということが懸念される。
企業組合Bが狭義の出版事業体とは異なる事業を展開する場合にはこの問題は生じ
ないが、ここで想定している「事業の拡大」とは本来企業組合Aの事業としてなされ
るべき性質の出版事業に限定した事業拡大であり、これは相当高い確率で予想される

従って、柳原さんが提案して下さったように、株式会社を起ち挙げる前に投資組合を
立ち上げ、その投資組合にも株式会社の発起人に名前を連ねてもらう、という案が妥
当だと思います(ちなみに、柳原さんが意味不明とおっしゃった最後の疑問点とは、
このことです。要するに、投資組合が投資先の株式会社の発起人になれるのかどう
か、が疑問だったのです)。

出資に関して、僕としては、現実的に考えて、少数者から集める場合は、一人当たりの
出資額が高額になることや、
今後の活動や事業展開に、「組合」の持っている基本理念の余地を残す、という意味で
も内輪以外の方からの出資もあっていいし、このシステムをHPなどで完全に公開し
た後で(こんなことはまずないと思いますが)、そういう投資組合を自分たちで作っ
てお前の会社に投資するから、こんなことをやれ、なんていう手強い読者連合が顕れ
たっていいでしょうし。また、その数も投資組合法で規定されている1組合49名と
いうのも、こちらの事業展開の当初の規模を考えれば、まあまあ、妥当な数字なので
はないかと思います。
また、投資組合は法的には単に金を出すだけでなく、経営参画・著作権所有な
ど、投資先への介入が認められている訳ですから、これを介入というより、参加可能
性と解すれば、アソシエーティヴな余地を排除しないインフラ構成とも言えるのでは
ないか。いずれにせよ、投資組合は現段階では想像していないことに、立ち上げ後、
運用できる可能性もあるような気がするので、投資組合−株式会社という組み合せ
は、僕としては○です。
‥‥

以上、返信まで。

内藤裕治

私→内藤さん(6.1/00)

Subject: Re: Fw: 11日

内藤さんへ

さっそく、メール、ありがとうございました。
企業組合でいく場合の問題点についても、詳細なコメント、ありがとうございました。

> 必要な資金を調達するにあたって、不特定の人たちからの調達が困難になること。
> 例えば、「中小企業等協同組合法」に定められている組合の設立要件では、最低発起
> 人が四名であったと記憶していますが、これは発起人を含む組合員の誰か一人が、出
> 資総額の25%を超えて出資してはならない、という規定と相即のものであったはず
> です。したがって、必要出資額を集めるために、発起人のだれか一人に高額の出資を
> 期待すると、その額が出資総額の25%を超えないようにするためには、他の発起人
> もそれに対応した金額を出資をしなければならなくなるか、発起人以外に出資をして
> もらう組合員の数を増やさなければならなくなりますがこれは「組合員の3分の2以
> 上が組合の事業に従事しなければならない」という規定から難しい

おっしゃる通りで、3000万を全部、組合員の出資で調達しようとするのは困難ですね。
従って、この場合には、必要資金の調達方法を、一部、組合員の出資で、残りをそれ以外の方法(といっても、何がいいのか今すぐ思いつかない(^^;))でやるという二段構えでやるしかないですね。


> い)あ)の混乱を避けるため、企業組合Aに後続して起ち挙げた企業組合Bは取次店
> に口座を持たないいわゆる企業組合Aの編集プロダクションという体裁にし、口座は
> 企業組合Aで一括処理し、奥付けには「発行元:企業組合B、発売元:企業組合A」
> というスタイルを選択する、ということが考えられますが、これは編集者の一般的な
> 意識から行って、編集プロダクションよりも発売元である独立した出版社で働きたい
> という意向が強いため、仮に企業組合Bのようなものを一つないし、複数作った場
> 合、そこで働く編集者に恒常的な不満が生じ、結果としてAとそれ以外というヒエラ
> ルキーを作ってしまうのではないか、ということが懸念される。
> 企業組合Bが狭義の出版事業体とは異なる事業を展開する場合にはこの問題は生じ
> ないが、ここで想定している「事業の拡大」とは本来企業組合Aの事業としてなされ
> るべき性質の出版事業に限定した事業拡大であり、これは相当高い確率で予想される

言われてみるとなるほどなと思いました。
ただ、編集者の「出版社で働きたいという意向」は、編集プロダクションが下請けで、物心両面に渡ってバカにされているという悲惨な現状から来るのでしょうが、実際は、本当に価値のあるものを作っているのは、その編集プロダクションの筈ですよね。だから、映画の黒澤プロダクションみたいに誇りをもって仕事をして、東宝や松竹みたい胴元を嫌うくらいになってもらえるようになるといいのでしょうが。


もともと商売柄で、見解が分かれる問題については、とにかく、その見解の可能性を徹底的に追求してみるという癖がありまして、それで、生意気なことをつい書いたかもしれません。
でも、ともかく、内藤さんの考えがよりよく分かり、参考になりました。

ありがとうございました。

とりいそぎ。

私→内藤さん(6.1/00)

Subject: 中央会への問い合わせ

内藤さんへ

昨日の以下の質問を、中央会に電話で問い合わせてみましたので、結果をお知らせします。


>>企業組合の出資総口数の過半数は、組合の行う事業に従事する組合員が保
>> 有しなければならない
>
>という点ですが、ここはなお、法的に詰める必要があります。つまり、
>内藤さんはいいとしても、柄谷さんや浅田さんなどが行なう編集活動が、
>他方で大学の研究者でありながら、この企業組合の「行う事業に従事する」組
>合員として評価されるかどうかの点です。
>
>また、協同組合法9条の11に、企業組合に関し、
>1、組合員の3分の2以上が、組合の行う事業に従事していなければならない
>(1項)
>2、組合の行う事業に従事する者の2分の1以上は、組合員でなければならな
>い(2項)
>   ↑
>これについても、
>上と同じく、1項と2項の「組合の行う事業に従事」とは、どこまでの関与を
>言うのかどうか。具体的には、別の仕事を持っていて、組合の事業にも関わる
>という場合は一切ダメなのかどうか。もし可能とした場合、どこまで関与して
>いれば可能なのかどうか。
>また、2項の「組合の行う事業に従事する者」というのは、どこまでを含むの
>か。契約社員やアルバイトも含むのかどうか。

ここでいう「組合の行う事業に従事」するというのは、あくまでも「専従」という意味であって、回答者に言わせると、「組合の事業に没頭しなければいけない」そうで、大学で教えていて、給与をもらっているような人ではダメだそうです。
だから、柄谷さんや浅田さんはいくら熱心に編集活動をしていても、「組合の行う事業に従事する者」には該当しませんということだそうです。

(残念ながら)その意味で、現行法の企業組合では益々難しいことが分かってきました(^^;)。

とりいそぎ。


注1

中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律では、当初、投資の対象は、「中小企業者」に該当する株式会社に限定されていましたが、2003年5月に法改正があって、株式会社組織以外でも次の者が投資の対象となれると拡大されました。

 中小企業者に該当する合名会社、合資会社、有限会社及び個人
 企業組合及び協業組合(注)
中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律2条1項2号と3号の追加)