7.10/98
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本日、東京地方裁判所に、コナミの人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主要人物「藤崎詩織」のキャラクターを無断使用してアニメのアダルトビデオを製作・販売している者を相手に、著作権侵害の裁判をおこした。絵画の無断複製をめぐる著作権侵害の訴提起をおこなった。以下は、その直後、裁判所内の司法記者クラブで記者会見したとき、配布した資料。
著作権侵害に基づく販売差止訴訟を提起
コナミ(株)(代表取締役社長 上月景正)は、本日、自社人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主役「藤崎詩織」を無断使用して、アニメのアダルトビデオを制作・販売した相手方に対し、販売差止、損害賠償、謝罪広告を求めて、東京地方裁判所に提起いたしました。
このアニメーションは、「ときめきメモリアル」の主役で人気キャラクターでファンの圧倒的支持を受けている「藤崎詩織」を無断使用し、且つ「ときめきメモリアル」のゲームのエンディング部分を翻案使用して、全編藤崎詩織のSEXシーンを次々と繰り広げる悪質なエロ・グロ的アダルトビデオです。
これまでも、「ときめきメモリアル」の人気キャラクターを無断で使用するケースは多々あり、その都度、無断使用者に対して、法的措置をとりまた個々に警告を行い、損害賠償、謝罪広告の掲載等、厳しい姿勢で臨んで参りました。
今回のアニメーションは藤崎詩織の清純なイメージを台無しにする悪質極まりない内容であり、断固たる法的な措置をとることに致しました。
その詳細は、添付の訴状(写)をご参照ください。
コナミ(株)代理人
弁護士 柳原敏夫
問い合わせ先
コナミ(株) 知的所有権室
室長 竹内弘行
事件番号 東京地裁民事第29部 平成10年(ワ)第15575号 著作権侵害差止等請求訴訟事件
当事者
原 告 コナミ 株式会社
被 告 シェーンこと駒見一郎
訴えの提起 本年7月10日
一審判決 99年8月30日
訴 状
当事者の表示 別紙当事者目録記載の通り
著作権侵害差止等請求訴訟事件
訴訟価額 金二三二五万七三〇〇円也
貼用印紙 金 一一万一六〇〇円也
請求の趣旨
一、被告は、別紙著作物目録記載のビデオカセットを製造、販売又は頒布をしてはならない。
二、被告が有する別紙著作物目録記載のビデオカセットの在庫品及びマスターテープは廃棄せよ。
三、被告は原告に対し、金一〇八四万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四、被告は朝日新聞(全国版)、読売新聞(全国版)、毎日新聞(全国版)及び日本経済新聞(全国版)にそれぞれ一回ずつ別紙目録一記載の謝罪文を別紙目録二記載の条件で掲載せよ。
五、訴訟費用は被告の負担とする。
旨の判決並びに三、五項につき仮執行宣言を求める。
請求の原因
第一、当事者
原告は、コンピュータ用ゲームソフト及びその他のアミューズメント機器の製作・販売を主たる業務内容とする法人であり、被告は、ペンネーム「シェーン」の名で、既存のアニメやゲームを題材にしてアニメーションなどを企画・製作・販売している者である。
第二、権利の目的たる著作物及び著作権者
原告は、その発意に基づき、従業員をしてコンピュータ用ゲームソフト「ときめきメモリアル」(以下本件ゲームソフト著作物という)を職務上作成させ、平成六年五月二七日、PCエンジン用のゲームソフトとして、原告の著作の名義の下に公表発売した。その後、本件ゲームソフト著作物は、原告により、平成七年一〇月一三日、「ときめきメモリアル~for
ever with
you~」という題名でプレイステーション版が、平成八年二月九日、「ときめきメモリアル~伝説の樹の下で~」という題名でスーパーファミコン版が発売された(甲第二号証、甲第一三号証、検甲第一号証参照)。
すなわち、原告が本件ゲームソフト著作物の著作者であり、著作権及び著作者人格権を保有している。
そして、本件ゲームソフト著作物は九八年三月末日現在、一二〇万本以上の販売実績を上げ、ゲームソフト関係の雑誌「ファミコン通信」九五年一一月一〇・一七日合併号の売上ランキングでは本件ゲームソフト著作物(プレイステーション版)が初登場で一位にランキングされ(甲第三号証)、第三回日本ソフトウェア大賞94のエンターテイメントソフト部門優秀賞及びアスキー読者賞、(株)ソニーコンピュータエンタテイメントのPlayStaiton
Club Award 「My
Favorite Game賞」、(株)徳間インターメディア書店の九五年度PS
Mag読者が選ぶPSソフト大賞「ベストソフト部門 第一位」「キャラクター部門 第一位」、また、九六年一月、出版社八社のゲーム雑誌計一七誌の誌上読者人気投票でグランプリを獲得し、"JAPAN
GAME OF THE YEAR
'96"を受賞するなど、圧倒的な人気を得た(甲第四~六号証)。
さらに、その人気ぶりから、本件ゲームソフト著作物の二次的著作物として、九七年には劇場用実写映画「ときめきメモリアル」が制作され(甲第七号証)、九四年六月から「ときめきメモリアル」関連の音楽CDが六〇タイトル以上発売され(甲第八号証)、九七年八月には小説「ときめきメモリアル」の第一巻が出版され(甲第九号証)、また関連ゲームソフトとして、以下のものが次々と制作・発売された(甲第一〇号証)。
・ときめきメモリアル~プライベートコレクション~(九六年四月)
・ときめきメモリアル対戦ぱずるだま(九六年九月)
・ときめきメモリアル
Selection
藤崎詩織(九七年三月)
・ときめきメモリアル対戦とっかえだま(九七年六月)
・ときめきメモリアルドラマシリーズVol.1
虹色の青春(九七年七月)
・ときめきメモリアルドラマシリーズVol.2
彩のラブソング(九八年三月)
第三、本件ゲームソフト著作物のキャラクターについて
このような本件ゲームソフト著作物の圧倒的な人気の秘密はひとつには、原告が苦心の末作り出した藤崎詩織らをはじめとするユニークな登場人物のキャラクターにある(但し、ここでいうキャラクターとは、登場人物の絵ないし絵画的表現部分のことを指す)。とりわけ、主要人物の藤崎詩織のキャラクターは、その清純なイメージゆえにファンの圧倒的な支持を受けた。その人気ぶりから、これらのキャラクターを特集した「ときめきメモリアル」のイラスト集が編集出版され(甲第一一号証)また、藤崎詩織のオフィシャルファンクラブはその会員数が約五千名に達し、さらに、九六年一二月五日、藤崎詩織は、実在しないファンシフル・キャラクターとして音楽界にデビューし(バーチャルタレントといわれた)、これまでのところ、次の通り、六タイトルの音楽CDが制作・発売された(甲第一二号証)。
・
教えて Mr.
Sky/風と一緒に行こう
・
終らないメモリー/鼓動を止められなくて
・
もう一度キスしよう/夢を抱きしめていて
・
My Sweet
Valentine
・ Memories
・
藤崎詩織 piano
collection
また、このような圧倒的な人気を背景に、藤崎詩織らのキャラクターの商品化は、現在までのところ、一五〇〇品目の商品において利用され、一〇〇億円を超える売り上げを計上している。
かくして、藤崎詩織のキャラクターは若者の間ではあまねく知れ渡っている。
第四、被告の無断利用行為
一、ところが、被告は、前記の通り、本件ゲームソフト著作物のキャラクターが人気を博したことに目をつけて、とりわけ清純派として最も人気の高い藤崎詩織のキャラクターを使ってアニメーションを製作することを企画し、自ら総指揮を取ってグループ「赤紙堂」に委託して、「どぎまぎイマジネーション」(以下本件アニメーションという)と題するアニメーションを製作し、ビデオカセット(以下本件ビデオという)に複製して、本件ビデオはおそくとも平成九年一月ごろには店頭に並べられ、市販された(検甲第二号証、甲第一三号証、甲第一四号証)。
本件ゲームソフト著作物のことを知っている者ならば、一〇分足らずの本件アニメーションを一見してみれば、本件アニメーションが本件ゲームソフト著作物のいわばショート続編、しかもおぞましくもエロ・グロ的な続編に仕立て上げられたアダルトビデオであることがすぐ分かる。すなわち、
もともと、本件ゲームソフト著作物の内容は、プレイヤーが架空の高校「きらめき高校」の高校生となり、高校三年間に様々なことをおこない、一定の条件を満たすと主要人物藤崎詩織ほかの女生徒の中から、高校卒業の日、伝説の樹の下で告白をうけるというものであり、本件ゲームの冒頭、藤崎詩織の声で次のようなナレーションが流れる(検甲第一号証)。
《 はじまりがあれば、おわりがあるように
であいがあれば またわかれもあるのです
永遠につづくふたりの関係
それは、どんなに幸せなことでしょう
ここ、きらめき高校には
一つの伝説があります
校庭のはずれにある
一本の古木
そのたもとで卒業の日
女の子からの告白で
生まれた恋人たちは
永遠に幸せな関係になれるという
伝説が… 》(甲第二号証の解説二頁にも同様の記載がある)
そして、本件ゲームのエンディングにおいて、古い大きな樹の下で、たとえば藤崎詩織から告白を受けることができたとき、これに対しプレイヤーは次のような科白で答え、ラストを飾る(検甲第一号証)。
《「実を言うと僕も詩織の事が」
「もちろんだよ。好きだよ、詩織。」》
これに対し、本件アニメーションは、次のようなナレーションと字幕からスタートする。
《
「校庭のはずれにある
一本の古木
そのたもと卒業の日
女の子から
告白して生まれた
永遠に
幸せになれるという
伝説がある」
「実を言うと僕も君のことが」
「もちろん好きだよ」
》
つまり、本件アニメーションは、まさに本件ゲームのエンディングに相当する、古い大きな樹の下で女生徒から告白を受けたシーンからスタートするのである。
従って、「どぎまぎイマジネーション」という題名において、また右のような状況設定において、ここで登場する女生徒は、その容姿の表現といい、服装の表現といいその個性的な表現方法の特徴に着目すれば、まさしく本件ゲームソフト著作物の主要人物である藤崎詩織を表現したものであることが直ちに覚知できる(甲第一号証、検甲第一号証及び同第二号証)。
この点は、本件アニメーションの存在を知った一般の人たちの反応からも容易に理解できる。すなわち、本件ゲームソフト著作物のファンが作成しているホームページ「Tokimeki☆To―Site」では、本件アニメーションを本件ゲームソフト著作物に関連した作品として紹介している(甲第一五号証)し、また、雑誌「フライデー」本年六月五日号でも、
《150万本! 大人気ゲームソフトの主人公が被害に
「藤崎詩織」海賊版AVの暴走》
という見出しで、本件アニメーションが本件ゲームソフト著作物の藤崎詩織のキャラクターの「海賊版」であることを指摘している(甲第一六号証)。
以上より、本件アニメーションの主要人物のキャラクター(=絵画的表現部分)は本件ゲームソフト著作物の主要人物藤崎詩織のキャラクター(=絵画的表現部分)の複製にあたるというべきであり、それゆえ、本件アニメーションの製作及び本件ビデオの複製・販売行為は原告が有する著作権の侵害行為に該当する(「ポパイ」事件東京地裁平成二年二月一九日判決。同事件東京高裁平成四年五月一四日判決参照)。
二、のみならず、本件アニメーションは、「詩織チャンのSEXシーンが次々と繰り出されていく」(甲第一六号証のコメント)と評されていることからも明らか通り、全編、ただのエロ・グロ的なアダルトビデオである。
その結果、ファンから圧倒的な支持を受けた藤崎詩織のキャラクターの清純なイメージは、無残にも損なわれた。このような行為はまさしく、本件ゲームソフト著作物の藤崎詩織のキャラクター(=絵画的表現部分)の品位を著しく貶め、傷つけるものに他ならず、著作物の本質に触れる改変として、著作権法上、原告が有する同一性保持権の侵害行為に該当する。
以上の通り、被告は、原告の有する複製権及び同一性保持権を侵害する本件アニメーションのビデオを現在も複製・販売している。
よって、請求の趣旨第一項及び第二項に記載の通りの判決を求める。
第五、原告の損害
一、複製権侵害について
原告がこれまで複製した本件ビデオの本数は九〇〇本を下回ることはあり得ず、また、たかだか十分程度の本件アニメーションの製作費は一五万円を上回ることはあり得ず、そして、本件アニメーションから本件ビデオを制作するに要した費用(パッケージの印刷代やビデオカセットの費用等)は一本あたり三〇〇円をを上回ることはなく、さらに、小売店への卸し価格は一本あたり一四〇〇円である(以上甲第一四号証)。 従って、原告が本件ビデオにより得た利益は、
(卸し価格一四〇〇円-三〇〇円)×九〇〇本-一五万円=八四万円
を下回ることはない。
よって、被告は、右複製権の侵害に基づく財産的損害の賠償として、著作権法一一四条一項により、金八四万円を支払う義務がある。
二、同一性保持権の侵害について
前述した通り、原告は、被告の右行為により、苦心して作り上げた藤崎詩織のキャラクターの清純なイメージを徹底的に損なわれた。それは、「ファンの夢をも陵辱している」(甲第一六号証の解説)許し難い行為である。
それゆえ、原告の被った著しい精神的苦痛を慰謝するためには、その慰謝料の金額は少なくとも一〇〇〇万円を下らない。
三、よって、原告は被告に対し、請求の趣旨第三項に記載の通り、金一〇八四万円及び
これに対する訴状送達の翌日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第六、著作者人格権侵害に基づく謝罪広告の請求
第四で前述した通り、被告は原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているから、原告は被告に対し、著作者としての名誉を回復するために適切な措置を請求する権利を有するものである。
よって、原告は被告に対し、請求の趣旨第四項に記載の通り、謝罪広告を掲載するよう求める。
以 上
証拠方法
一、甲第一号証 甲第二号証の藤崎詩織のキャラクターと検甲第二号証の本件ビデオのパッケージの女生徒のキャラクターを対比したもの
二、甲第二号証 本件ゲームソフト著作物の解説書の表紙
三、甲第三号証の一~三 週刊「ファミコン通信」九五年一一月一〇・一七日合併号
四、甲第四号証の一、二 平成七年四月二一日付読売新聞
五、甲第五号証 写真((株)ソニーコンピュータエンタテイメントのPlayStation
Club Award「My
Favorite
Game賞」の楯を撮影したもの)
六、甲第六号証の一~八 雑誌「プレイステーションマガジン」平成八年一月一九日号
七、甲第七号証 映画「ときめきメモリアル」の宣伝パンフレット
八、甲第八号証 本件ゲームソフト著作物関連の音楽CDの資料
九、甲第九号証 小説「ときめきメモリアル」第一巻の奥付け
一〇、甲第一〇号証 KONAMI
magazine 1998
vol.7
一一、甲第一一号証 「ときめきメモリアルオフィシャルイラスト集」奥付け
一二、甲第一二号証 藤崎詩織の音楽CDの資料
一三、甲第一三号証 原告社員中宮雄幸作成の報告書
一四、甲第一四号証
小売店が被告より本件ビデオを買い取った代金の領収証
一五、甲第一五号証の一~三 本件ゲームソフト著作物のファンクラブのホームページ
一六、甲第一六号証の一、二 雑誌「フライデー」(本年六月五日号)の記事
一、検甲第一号証 本件ゲームソフト著作物の紹介ビデオ
二、検甲第二号証 被告製作・販売の本件アニメーションのビデオ
添付書類
一、委任状 一通
一、会社の登記簿謄本
一通
平成一〇年 七月一〇日
右原告訴訟代理人
弁 護 士 柳 原 敏 夫
東京地方裁判所
御中
兵庫県神戸市中央区港島中町七丁目三番地の二
原 告 コナミ株式会社
右代表者代表取締役
上 月 景 正
東京都千代田区麹町五丁目七番地 秀和紀尾井町TBRビル 一〇一〇
武藤総合法律事務所 電話〇三(三二三九)五七七八
〒
右訴訟代理人弁護士 柳
原 敏 夫
東京都新宿区‥‥
被 告 ‥‥ こと
〒
‥‥
以 上
題 名 とぎまぎイマジネーション
企画・原案・総指揮
‥‥ こと
‥‥
制 作 ‥‥
製造・発売元
‥‥ こと
‥‥
発 売 年
平成九年
以 上
謝罪広告
私が平成 年 月制作、発売しましたアニメーションビデオ「どぎまぎイマジネーション」は貴社制作のコンピュータ用ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主要人物の藤崎詩織のキャラクターを無断で使用し、同時に改変したものであり、これにより貴社の著作権及び著作者人格権を侵害しましたことを、ここに謹んで謝罪いたします。
平成 年 月 日
‥‥ こと
‥‥
コナミ株式会社
代表取締役 上月景正 殿
以 上
一、掲載スペース
二段抜き左右一〇センチメートル
二、活字の大きさ
表題 二〇級ゴシック
本文 一六級明朝体
記名・宛名 一八級明朝体
以 上
Copyright (C) daba