「エージー出版」無断複製事件

----資料15:仮処分の決定の主文----

5.28/98


コメント
 
 これはイラストの無断出版事件という一見ありふれた著作権侵害事件のひとつにすぎないが、しかし、侵害の目的物がデジタル著作物という20世紀の最大の発明のひとつであったため、それを利用していかに悪辣なことができるか(といってもその全貌が明らかになった訳ではないが)を示した、その意味で、デジタル時代の先駈けを示すような象徴的な事件だった。

だから、この悪辣な事件の情報をできるだけ公開することは、すこぶる意味があると思い、ここに可能な限りの情報を公開する。
実際に、この資料の整理をしてくれたのは、被害者のイラストレーターのひとり塚崎健吾氏であり、この事件のビジュアルな紹介は、彼のホームページ《デジタル時代の著作権》を参照されたい。

このページは、出版差止を認める裁判所の仮処分の決定の主文。
和解の大詰めで、債務者エージー出版は「本件書籍はもはや店頭に並んでおらず、差止の必要性がない」と主張し(債務者準備書面(1))、これにに対する債権者側の反論(債権者準備書面(2))を受け入れての決定であった。


事件番号 東京地裁民事第29部 平成10年(ヨ)第22009号 著作権仮処分事件
当事者   債権者 叶精作ほか20名  
       債務者 株式会社エージー出版
            代表取締役 和田光太郎
                    
仮処分の申立  本年2月 3日
仮処分の決定      5月28日



仮処分決定

             

      当事者の表示   別紙当事者目録記載のとおり

 右当事者間の平成一〇年(ヨ)第二二〇〇九号仮処分命令申立事件について、当裁判所は、債権者らの申立てを相当と認め、債権者らに代わる第三者柳原敏夫に金一四七万円の担保を立てさせて、次のとおり決定する。

             主    文
一 債務者は別紙書籍目録記載の著作物を出版、販売または頒布してはならない。
二 債務者は、右著作物の製品、半製品及び紙型の占有を解いて、東京地方裁判所執
 行官にその保管を命ずる。

    平成一〇年五月二八日

          東京地方裁判所民事第二九部

                裁判官 沖 中 康 人 (印)