「エージー出版」無断複製事件

----資料14:債権者準備書面(2)----

5.26/98


コメント
 
 これはイラストの無断出版事件という一見ありふれた著作権侵害事件のひとつにすぎないが、しかし、侵害の目的物がデジタル著作物という20世紀の最大の発明のひとつであったため、それを利用していかに悪辣なことができるか(といってもその全貌が明らかになった訳ではないが)を示した、その意味で、デジタル時代の先駈けを示すような象徴的な事件だった。

だから、この悪辣な事件の情報をできるだけ公開することは、すこぶる意味があると思い、ここに可能な限りの情報を公開する。
実際に、この資料の整理をしてくれたのは、被害者のイラストレーターのひとり塚崎健吾氏であり、この事件のビジュアルな紹介は、彼のホームページ《デジタル時代の著作権》を参照されたい。

このページは、債務者エージー出版より、準備書面(1)で「本件書籍はもはや店頭に並んでおらず、差止の必要性がない」と突如、主張されたので、これに対する債権者側(憤激の)反論をした債権者準備書面(2)。


事件番号 東京地裁民事第29部 平成10年(ヨ)第22009号 著作権仮処分事件
当事者   債権者 叶精作ほか20名  
       債務者 株式会社エージー出版
            代表取締役 和田光太郎
                    
仮処分の申立  本年2月 3日
仮処分の決定      5月28日



債権者準備書面(2)

平成10年5月26日

 平成一〇年五月一四日付債務者準備書面(以下債務者準備書面(1)という)において、債務者は「本件においては、保全の必要性がない」旨主張・立証したが、以下に反論する通り、これは出版差止の決定を免れるために故意に行なった虚偽の主張にほかならない。

一、債務者の主張
  本件において保全の必要性がないという債務者の主張とは、要するに、
@ 当初、店頭に並んだ本件書籍は、既に回収済みであり、かつ
A その後、新たに本件書籍を店頭に出荷・販売した事実はない
B 結論として、本件書籍はもはや店頭にはなく、出版差止の意味がない
というものである(債務者準備書面(1)三頁)。
 そして、これにさらに、債権者代理人の質問(疎甲第一八号証)に対する債務者代理人の回答書(疎甲第一九号証)で回答した内容及び本件書籍の発売元である株式会社オーク出版サービス(以下オーク出版という)作成の報告書(疎乙第四号証)の内容を盛り込めば、
@ 当初、店頭に並んだ本件書籍は、債務者(側)の回収の指示により、本年三月末 日をもって回収済みであり、かつ
A 三月末日以降、債務者(側)は新たに本件書籍を店頭に出荷・販売した事実はな い
B 結論として、本件書籍はもはや店頭にはなく、出版差止の意味がない
ということになる。

二、債務者の主張の虚偽
  しかし、右主張は、以下に述べる通り、債務者の全くのでっち上げにほかならない。
 1、Bについて
 保全の必要性がないという債務者の主張にもかかわらず、本件書籍は、以下に述べる通り、今なお、東京、横浜、京都などの大手書店の店頭に堂々と並べられ、売られている。
 (1)、新宿
   紀伊国屋本店(疎甲第一二号証2)
   紀伊国屋新宿南店(疎甲第一三号証)
 (2)、池袋
   西武百貨店「リブロ」(疎甲第一二号証3)
 (3)、渋谷
   三省堂 渋谷東急文化会館店(疎甲第一四号証)
   紀伊国屋 渋谷東急プラザ店(疎甲第一四号証)
   パルコブックセンター 渋谷店(疎甲第一四号証)
 (4)、横浜
   ルミネ有隣堂(疎甲第一五号証)
 (5)、京都
   J&P寺町店APPLE館1F書籍コーナー(疎甲第一六号証)
 真相がどうしてこのようなものであったかというと、これらの書店で本件書籍を発見した債権者ほかの人たちが書店の担当者に尋ねたところ、以下のような事実が判明した。
 2、@について
《各書店から本件書籍を回収した》(債務者準備書面(1)三頁七行目)
という債務者の主張にもかかわらず、真実は、
本年二月一〇日以降今日まで、債務者(及び発売元のオーク出版)より前記各書店に対し、本件書籍を回収するという指示は一度も出ていない(仮にもし、回収の指示が出れば、書店はすぐさま書籍を出版社に返品する)。
 このことは、前記各書店の担当者がこぞって証言している(疎甲第一二〜一五号証)。
 3、Aについて
《(三月末日の)回収の報告後、当社から出荷、販売した事実はありません》(疎甲第一九号証1五行目)
という債務者の主張にもかかわらず、真実は、
三月末日以降はむろんのこと、発売元のオーク出版作成の報告書(疎乙第四号証)が作成された五月八日以降においても依然、《当社から出荷、販売》されている。
 このことは、前回の審尋期日(五月一四日)のすぐあと、債権者の福間晴耕が青山ブックセンター広尾店を通じて本件書籍を注文したら、オーク出版より本件書籍が出荷され、販売されたことからしてもはや言い逃れしようがない(疎甲第一七号証の一、二)。
 さらに、債権者の塚崎健吾が、五月一五日、池袋西武百貨店の書籍売場「ビブロ」において、売場責任者の武井恒氏より、
《「マックでデザイン」誌は、一九九八年四月二四日に、ニッパン取り次ぎで、オーク出版から入荷したもの》(疎甲第一二号証3)
という証言を得ていることからも明らかである。
 また、債権者の駄場寛が、五月一四日、前回の審尋直後、新宿の紀伊国屋新宿南店において、第六課係長の立石花子氏より、
《入荷時期は本年五月、取次店(オーク出版サービス)が直接配本に来た》(疎甲第一三号証)
という証言を得ていることからも明らかである。
 同じく、債権者の藤森美能が、五月一七日、渋谷のパルコブックセンター渋谷店において、担当者の野村智子氏より、
《引き上げ申請等はなく、逆に、頻繁にこの書店を訪れるオーク出版サービスの営業担当に、近日も店頭に置くように勧められた》(疎甲第一四号証二枚目)
という証言を得ていることからも明らかである。

4、以上から明らかな通り、債務者の
《以上のとおり、委託期間が経過し、返品が完了し、販売が停止されている以上、債権者らには保全の必要性がない。》(債務者準備書面(1)三頁終わりから二行目)
という主張は真っ赤な嘘であり、公正な裁判に対する露骨な挑戦にほからない。
 このような虚偽による出版差止妨害行為の事実を知って、債権者はやり場のない憤激に襲われている。この我々債権者の心情は、或る債権者の次の言葉が如実に代弁しているだろう。

《我々は、これでもう四回も頭を債務者からこん棒で殴りつけられたような気分だ。 一回目のこん棒は、無断出版。
 二回目のこん棒は、弁護士連名の回答書(疎甲第四号証)で、我々にとって原画同然の重要性を持つデジタルデータの削除の要求に対して、
「株式会社エージー出版の保存機器からのデータ削除も完了しておりますのでご心配にはおよびません」
とぬけぬけと嘘をつかれたこと。
 三回目のこん棒は、我々が全国に散らばる本件書籍の全著作権者に裁判参加を呼びかけるやいなや、債務者は反省して謝罪するどころか、これらの著作権者らに対し、「事後承諾書」を送り付けて我々の裁判提訴を妨害する行為に出たこと(疎甲第五号証の塚崎陳述書の5頁)。
 そして、四回目のこん棒が、参加者が集まりようやく裁判も始まって、裁判所から著作権侵害を指摘してもらい、これでやっとまともな解決が可能になるのかと胸をなで下ろした矢先、今度はこともあろうに、裁判所を相手に、虚偽を承知で、返品が完了し、販売が停止されているから差止は認められない、と差止を妨害する行為に出たこと。
 もし、こんなことが本当にまかり通ったら、これでは正義はいったいどこにあるのだろうか?》

以 上

疎明方法

一、疎甲第一二号証 債権者塚崎健吾作成の報告書
二、疎甲第一三号証 債権者駄場寛作成の報告書
三、疎甲第一四号証 債権者藤森美能作成の報告書
四、疎甲第一五号証 イラストレーター飯田HAL作成の報告書
五、疎甲第一六号証 イラストレーター藤原ヨウコウから債権者福間晴耕宛の電子メ          ール
六、疎甲第一七号証 本件書籍の取り寄せ記録・本件書籍販売の領収証
の一、二
七、疎甲第一八号証 債権者代理人から債務者代理人への質問状
六、疎甲第一九号証 右質問状に対する債務者代理人の回答書

                                  以 上 

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