「エージー出版」無断複製事件

----資料11:債務者準備書面(1)----

5.14/98


コメント
 
 これはイラストの無断出版事件という一見ありふれた著作権侵害事件のひとつにすぎないが、しかし、侵害の目的物がデジタル著作物という20世紀の最大の発明のひとつであったため、それを利用していかに悪辣なことができるか(といってもその全貌が明らかになった訳ではないが)を示した、その意味で、デジタル時代の先駈けを示すような象徴的な事件だった。

だから、この悪辣な事件の情報をできるだけ公開することは、すこぶる意味があると思い、ここに可能な限りの情報を公開する。
実際に、この資料の整理をしてくれたのは、被害者のイラストレーターのひとり塚崎健吾氏であり、この事件のビジュアルな紹介は、彼のホームページ《デジタル時代の著作権》を参照されたい。

このページは、和解の大詰めの段階で、突如、エージー出版から「本件書籍はもはや店頭に並んでおらず、差止の必要性がない」と(実は、その直後、債権者の反論によってこれが虚偽であることが判明した)主張し始め、出版差止の決定を妨害し、和解を有利に導こうとした債務者の準備書面(1)。

事件番号 東京地裁民事第29部 平成10年(ヨ)第22009号 著作権仮処分事件
当事者   債権者 叶精作ほか20名  
       債務者 株式会社エージー出版
            代表取締役 和田光太郎
                    
仮処分の申立  本年2月 3日
仮処分の決定      5月28日


債務者準備書面(1)

平成10年5月14日


一 債務者は、平成九年七月末、「マックでデザイン」(以下本件書籍という。)二〇〇〇冊の納品を受け、同年八月から、(株)オーク出版サービス、取次店を通じて、本件書籍を各書店において販売した。
出版業界には、注文販売と委託販売という販売方法があるが、本件書籍は委託販売出版業界には、注文販売と委託販売という販売方法があるが、本件書籍は委託販売であった。委託販売の場合、取引慣行として委託期間は六ケ月とされてあり、本件書籍の委託期間は、平成九年八月一一日から平成一〇年二月一〇日であった。
委託期間経過後、債務者は、取次店、オーク出版サーピスを通じて、各書店から本委託期間経過後、債務者は、取次店、オーク出版サーピスを通じて、各書店から本件書籍を回収した(乙四)。
また、オーク出版サービスからの報告により、本件書籍の販売部数は一四四六部でまた、オーク出版サービスからの報告により、本件書籍の販売部数は一四四六部であることが判明した(乙四)。
以後、債務者は 、販売を停止している。
以上のとおり、委託期間が経過し、返品が完了し、販売が停止されている以上、債権者らには保全の必要性がない。

二 債務者は、書籍の印刷を印刷屋に依頼した後も、書籍のバックアップのため、その書籍の内容をMOの形で債務者のもとに保管している。書籍の資料を印刷屋に送付した後、債務者のもとに残る書籍のデータはこのM Oだけである。
債務者がMOを保有している理由は、印刷屋での不測の事態に備えるためであり、MOを残すことは業界の常識である。
本件書籍は、従来から述べるように「MAC DE DESIGN」と全く同一内容であって、本件書籍独自のデータは表紙部分だけである。
債権者らは、和解案においてMO等の記憶媒体からデータを全部抹消することを求め債権者らは、和解案においてMO等の記憶媒体からデータを全部抹消することを求めるが、本件書籍の表紙の部分は別論、債権者ら自身が許諾した「MAC DE DESIGN」のデータ抹消を求めることは、明らかに権限の濫用である。

三 なお、本件仮処分においては、法人著作の主張は撤回することとする。