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コメント
これはイラストの無断出版事件という一見ありふれた著作権侵害事件のひとつにすぎないが、しかし、侵害の目的物がデジタル著作物という20世紀の最大の発明のひとつであったため、それを利用していかに悪辣なことができるか(といってもその全貌が明らかになった訳ではないが)を示した、その意味で、デジタル時代の先駈けを示すような象徴的な事件だった。
だから、この悪辣な事件の情報をできるだけ公開することは、すこぶる意味があると思い、ここに可能な限りの情報を公開する。
実際に、この資料の整理をしてくれたのは、被害者のイラストレーターのひとり塚崎健吾氏であり、この事件のビジュアルな紹介は、彼のホームページ《デジタル時代の著作権》を参照されたい。
このページは、97年11月に、著者のうち5名が、無断出版したエージー出版に送った抗議文。
以下、塚崎健吾氏のコメントを紹介する。
エージー出版社長の和田光太郎氏に宛てて申入書を郵送しました。エージー出版社長の和田光太郎氏に宛てて申入書を郵送しました。
郵便局員さんの話しでは内容証明を受けるには、20文字*26行に納まる文書1葉に限
る・とかで,どうやら、専用用紙に書いてカーボン複写するしか無さそう・という感
じでしたので、内容証明は諦め、配達証明をつけて投函しました。コピー機も普及し
ているのに・・・とは思うのですが、郵便局長が,その内容を把握するのには限度を
設けていなければ大変ですからねー・・・・などと思っていたのですが、どうやら20
文字*26行で1枚いくらという具合で、金銭的に頓着しなければ不可能な事では無かっ
たようです。
事件番号 東京地裁民事第29部 平成10年(ヨ)第22009号 著作権仮処分事件
当事者 債権者 叶精作ほか20名
債務者 株式会社エージー出版
代表取締役 和田光太郎
仮処分の申立 本年2月 3日
仮処分の決定 5月28日
株式会社エージー出版代表取締役和田光太郎様
拝啓、貴社が、私たちの著作物の著作権を侵害していることが判明しましたので、ここに正式に抗議をするとともに、次の通り申し入
れします。
貴社で発行された、「MAC DE DESIGN Vol.2」(1996年12月20日株式会社エージー出版発行)に使われていた私たちの著作物が、そ
の後、著作者である私たちに何の使用許諾も無く、別の出版物である「マックでデザイン」(1997年8月31日株式会社エージー出版発行)
に再使用されていることを知りました。
これは明かに著作権(著作財産権、著作者人格権の公表権)の侵害であります。
ここに厳重に抗議するとともに、正式な謝罪を要求します。
貴社が良識ある円満解決を望むのであれば、解決へ向けて、著作者の正当な権利として
左記の条件を出させていただきます。
一、全著作者への正式な文書での謝罪一、全著作者への正式な文書での謝罪
二、著作者のデータの即時返却、及び保存機器からの完全なデータ削除二、著作者のデータの即時返却、及び保存機器からの完全なデータ削除
三、全著作者へ見本書の献本三、全著作者へ見本書の献本
四、印税として発行部数×定価の10パーセントを各著作者の使用ページ数に四、印税として発行部数×定価の10パーセントを各著作者の使用ページ数に
応じた金額でそれぞれの著作者に支払う。応じた金額でそれぞれの著作者に支払う。
その際、製造、販売等につき詳細に記録した関係帳簿を作成しその際、製造、販売等につき詳細に記録した関係帳簿を作成し
閲覧させることとし、その資料の配布を行う。閲覧させることとし、その資料の配布を行う。
五、ペナルティとして、オリジナルの「MAC DE DESIGN Vol.2」の
著作権使用料10パーセントの各相当額を著作者に支払う著作権使用料10パーセントの各相当額を著作者に支払う
六、貴社の当発行物が著作者の許諾を受けていないことを、六、貴社の当発行物が著作者の許諾を受けていないことを、
当発行物を購入した読者に通知徹底させるため、貴社の負担で、当発行物を購入した読者に通知徹底させるため、貴社の負担で、
コンピュータグラフィクス関係の書籍、雑誌へ謝罪広告を掲載するコンピュータグラフィクス関係の書籍、雑誌へ謝罪広告を掲載する
以上の条件を叶えられない場合、また正式な回答が二週間以内に無い場合は、
発行停止、回収、著作権使用料の支払いを求めて法的な措置をとることになります。
貴社の見解を回答していただくよう申し入れする次第です。
平成九年十一月四日
別紙に 回答受け付けの窓口を、私の方でと 以下の文章を同封しました。
株式会社エージー出版 代表取締役 和田光太郎様
同封した申入書は、「MAC DE DESIGN Vol.2」の執筆者及び、デジタルイメージ、
日本出版美術家連盟の方々とも協議した結果、お送りするものです。日本出版美術家連盟の方々とも協議した結果、お送りするものです。
ご連絡は、窓口として 私、塚崎健吾が代表してお受けいたします。
以 上