2.26/97
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一昨年96年11月27日、人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」の内容が無断で変更されたとして、ゲームのデータを保存したメモリーカードを輸入販売した「スペックコンピュータ」を相手に、損害賠償と謝罪広告を求めて、大阪地裁に提訴した。
以下は、ゲームソフト「ときめきメモリアル」を開発した人(プロデューサー)による陳述書。
事件番号 大阪地裁民事第21部 平成8年(ワ)第12221号 損害賠償等請求事件
当事者 原告 コナミ株式会社
被告 スペックコンピュータ株式会社
訴提起 96年11月27日
判 決 97年11月27日
○○ ○○
本陳述書において、原告が作成したコンピュータ用ゲームソフト「ときめきメモリアル forever with you」(以下、本件ゲームソフトという)の仕組み・構造はいかなるものか、また、被告が輸入したメモリーカード「X-TERMINATOR PS版 第2号 ときメモスペシャル」(以下、本件メモリーカードという)を使うことによって、本件ゲームソフトの仕組み・構造にどういった事態が生じるかについて、具体的に陳述したいと思います。
第1、略歴
私は、昭和○○年4月に、原告会社に入社し開発部門にてゲームの開発業務を経て、本社管理部門、そして営業部門の経験後、現在、プレイステーション向けコンシューマーソフト開発を行っています。原告会社のグールプ会社である株式会社コナミコンピューターエンタティメント東京へ転籍、現在取締役開発部部長として勤務しております。
第2.本件ゲームソフトの仕組み・構造について
1、はじめに
(1)、時間設定
本件ゲームソフトは、1995年4月4日から1998年3月1日までの3年間を舞台とします。
プレイヤーは私立きらめき高校に入学した主人公(男性)として、卒業式までの高校生活を送っていきます。
(2)、本件ゲームソフトの最終目標
この私立きらめき高校には女の子なら誰もが信じる伝説があり、それは『卒業の日、校庭のはずれにある古い大きな樹の下で女の子から告白して生まれたカップルは永遠に幸せになれる。』というものです。
プレイヤーが最終的に目標とするものは、ほのかな恋心を抱いていた幼なじみの藤崎詩織(ふじさきしおり)から、卒業式の日に愛の告白を受けることです。
(3)、目標到達のために必要なプレイ
そのためには、プレイヤーは3年間の高校生活を通して勉強や運動を行い、また体育祭や文化祭などの様々なイベントを経験することにより男を磨いていく必要があります。
但し、高校生活の中で遭遇する藤崎詩織以外の女性に好意を抱き、その女性からの愛の告白を受けるために男を磨いたり、デート等を行うことはプレイヤーの自由です。
最終的に好意を抱いた女性から愛の告白を受けるにあたっては、勉強、運動や各種イベントだけではなく、その女性の性格や趣味等を把握し、女性とのデートや同伴下校、さらには女性との会話の内容も非常に重要な要素となってきます。
ここでは、プレイヤーが私立きらめき高校に本当に在籍している感覚を持ち、また現実世界での出来事であるとの認識を持ってプレイすることが必要であり、重要となります。
何故なら本件ゲームソフトは『恋愛シミュレーションゲーム』だからです。
(4)、ゲーム展開の多様性
また本件ゲームソフトは、プレイヤーの3年間の高校生活における行動により、ハッピーエンディング(=卒業式の日に、好意を抱いた女性から愛の告白を受ける)かバッドエンディング(=誰からも愛の告白を受けずに3年間を終了する)かが異なってくるという、いわゆるマルチエンディング方式を採用しており、何度も繰り返して楽しめる内容となっています。
すなわち、好意を抱いた女性から一度愛の告白を受けて本件ゲームソフトのエンディングを迎えたとしても、再度最初からプレイし、前回とは異なった手順(勉強、運動、イベント等への取り組み方を変えること)を踏むことにより全く異なった展開を楽しむことができ、前回とは異なった女性から愛の告白を受けること、または同一の女性に対して異なった手順により愛の告白を受けることも可能だからです。
2、本件ゲームソフトに登場するキャラクターの説明
好意を抱いた女性から最終的に愛の告白を受けるためには、プレイヤーがその女の子の性格や趣味等を十分把握して、それに相応しい行動(プレイヤーのステータスの向上、デートや同伴下校の際のその女の子との会話・誕生日のプレゼントなど)をとらなくてはいけません。そこで、本件ゲームソフトでは、以下の通り、それぞれ異なった性格や趣味等を持った13名の女生徒のキャラクターを創作しました。
@藤崎詩織(ふじさきしおり)
主人公(プレイヤー)とは家が隣同士の幼なじみ。
昔からほのかな恋心を抱いていた相手で、誰からも好かれる心優しい美少女。
しかも頭脳明晰でスポーツ万能の、きらめき高校のスーパーアイドル。
好みのタイプの男性は、やや理想が高め。勉強・スポーツを問わず、自分を磨くことが
必要となる。
A早乙女好雄(さおとめよしお)
入学式に知り合って以来、主人公(プレイヤー)の親友となる。
かなりの情報通で、女の子の情報やデートスポットなどに詳しく、デート前のアドバイ
スは頼りになる。
B伊集院レイ(いじゅういんれい)
入学式以来のライバル。世界的な大金持ちの家に育ち、キザで自己中心的。
現れる度にイヤミな言葉をはいては消える。しかし、美形なので女生徒たちにはたいへ
ん人気がある。
(注:伊集院に好意を抱き、行動を行うとエンディングでは伊集院から愛の告白を受け
実は女性であることが分かります。但し、これ以外のエンディングではあくまでも男
性キャラクターとして登場します。)
C早乙女優美(さおとめゆみ)
早乙女好雄の妹。主人公(プレイヤー)が2年生になると後輩として入学してくる。
子供っぽくてわがままな性格だが、明るく積極的に接してくる。
理想のタイプは、自分を一人の(一人前の)女性として扱ってくれる人。
D清川望(きよかわのぞみ)
正義感が強くて男勝りのスポーツ少女。優柔不断を嫌う。
しかしボーイッシュな外見とはうらはらに、意外な女らしさも持っている。
理想のタイプは、自分と一緒にスポーツを楽しめるような人。
E虹野沙希(にじのさき)
明るくて家庭的。面倒見が良く、困っている人を見ると放っておけない。
理想のタイプは、努力と根性のさわやかなスポーツマンタイプ。
F古式ゆかり(こしきゆかり)
上品な言葉遣いと物腰で、性格もおっとりしている、古式不動産の社長令嬢。
典型的なお嬢様であるせいか、物の考え方も楽天的。
スポーツの得意な男性が理想。
G美樹原愛(みきはらめぐみ)
女の子の友達は多いが、異性に対して極端なあがり症のため、男の子と付き合ったこと
がない。校内では目立たない存在。動物好きで空想癖があり、自分の世界に入ってしま
う。理想のタイプは、自分と同じく動物好きで、優しい人。
H朝日奈夕子(あさひなゆうこ)
ファッションや音楽など、流行っているものが大好き。話題のスポットには必ず行って
しまうミーハー少女で、にぎやかな性格で行動的。理想のタイプは、話題豊富で流行の
遊びに詳しい人。
I如月未緒(きさらぎみお)
本を愛する文学少女。ナイーブで真面目なため、好きになった人にはとても一途。
体が弱くて貧血気味なので、いたわってあげる必要がある。
理想のタイプは、文学を愛する人。
J片桐彩子(かたぎりあやこ)
細かいことは気にしない超マイペースな性格なので、つい思いつきで行動してしまう。
平凡な物事よりも、変わったことが大好き。理想のタイプは、芸術に理解のある人。
K紐緒結奈(ひもおゆいな)
物事を理論立てて冷静に考える頭の切れる女の子。とても気が強く、男の子とも常に
対等の立場でないと気がすまない。理想のタイプは、自分と同じ価値観を持つ人。
L鏡魅羅(かがみみら)
かなり大人っぽいクールな美人。校内にも彼女のとりまきは多い。
自分のルックスにかなりの自信を持っているため、少し高飛車なところもある。
その為か、自分と釣り合いのとれるくらいルックスの良い男の子がタイプである。
3、語句の説明
なお、ここで本件ゲームソフトの中身・仕組み・構造について説明するにあたって、わかりにくい語句について、解説したいと思います。
(1)「パラメーター(parameter)」=助変数(物事を決める要素となる数値)
(2)「コマンド(command)」=命令、命令する
本件ゲームソフトではプレイヤーの行動を決定すること
を指します。
つまりプレイヤーが行動を選択し、コンピュータに命令
することを指します。
(3)「アイコン(icon)」=《絵画・彫刻の》像、肖像、偶像
本件ゲームソフトでは、コマンドを視覚的に分かり易く絵で
表現したものを指します。
4、各パラメーターの説明
本件ゲームソフトを始めると、画面の上部に「体調 100、文系 40」といった項目と数値が示されます。これはプレイヤーの様々な項目についての能力値を示すもので、プレイヤーは、例えば目指す女の子が本を愛する文学少女ならば、プレイヤー自身が文系の能力値を高めることが不可欠となり、また目指す女の子がファッション好きでミーハーの子ならば、容姿や雑学の能力値を高めることが不可欠になるといったふうに、目指す女の子の性格や趣味に相応しい形で、能力値を高めるようプレイします。
そこで、これらのパラメーターの中身について一覧表で示します。
名 称 |
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数値が高いほど体調が良い | 休養 |
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文化系能力値 | 文系学習 |
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理科系能力値 | 理系学習 |
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芸術系能力値 | 芸術系学習 |
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運動系能力値 | 運動 |
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雑学系能力値 | 遊び |
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数値が高いほど容姿が整っている | おしゃれ |
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根性の度合いを表す | (特定の対応コマンドなし) |
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ストレスの溜まり具合を表す | 休養 |
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5、各コマンドの説明
本件ゲームソフトを始めると、画面の真ん中左側に3列5段のアイコンが示されます。プレイヤーはこのアイコンを選択することにより、以下の通り、或る行動をコンピュータに命令することになります。つまり、
一週間のうち平日において努力する行動については、上の3段のアイコンから選びます(休日でも選ぶことはできます)。例えば、文系の能力値を高めたかったら、左上のアイコンを選びます。
下の2段のアイコンには、主に一週間のうち休日においてだけ選べるアイコンが示されています。
例えば、女の子とデートの約束の電話をしたいときには、左下から2段目の電話のアイコンを選びます。
これらのアイコンが意味する行動の具体的な内容については、以下の一覧表で示します。
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主に文系パラメーターが上昇 | |
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主に理系パラメーターが上昇 | |
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主に芸術系パラメーターが上昇 | |
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主に運動系パラメーターが上昇 | |
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クラブの入退部及び活動。 11あるクラブ活動それぞれによって、 パラメーターの変化が異なる |
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主に雑学パラメーターが上昇 | |
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主に容姿パラメーターが上昇 | |
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体調が回復し、ストレスが減少 | |
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●早乙女好雄に電話した場合 1.女の子の自分に対する評判を聞く (7段階) 2.女の子の情報を聞く (電話番号、クラブ活動等) 3.デートスポットの情報を聞く ●女の子に電話した場合 1.女の子とデートの約束を取り付ける 2.女の子の機嫌をなおす |
休日のみ入力可 |
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デートをする | 休日のみ入力可 |
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情報誌を見る |
休日のみ入力可 これのみ他のコマンドとの併用可 |
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オプションの設定変更 | システム系コマンド |
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デートの予定などイベントのある日を確認 | |
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メモリーカードにセーブ、ロードできる。 | 平日のみ入力可 |
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次の週が学校行事等の必ず参加しなければならない。イベントの時のみ画面に表示される。 |
6、イベントの説明
(1)体育祭
体育祭では4つの種目があり、好きなものに出場できます。
プレイヤーの運動能力により、その勝敗は大きく左右されます。
(2)文化祭
文化祭は主人公(プレイヤー)が文化系クラブに入っていると出展者側のイベント、
入っていない場合は見学側としてのイベントとなります。
各クラブにより様々な出し物が用意されています。
(3)期末テスト
各学期末になると、試験期間があります。
試験は1週間かけて行われ、語学・数学・理科・社会・芸術・試験発表という日程にな ります。
日頃の勉強の成果が試されるときで、良い成績をとればそれだけ周囲の評価もよくな
ります。
(4)修学旅行
きらめき高校では、高校2年生のときに修学旅行があります。
行き先は、北海道、京都・奈良、沖縄の3カ所から選ぶことになります。
修学旅行には1週間かけて行くことになります。
(5)その他のイベント
イベントは決まった日にちに起きる学校行事関係の他に、デート中のハプニングや、
クリスマスパーティーや初詣など、季節にあわせたイベントがあります。
7、ゲームのセーブについて
本件ゲームソフトは、3年間を舞台としているため、プレイ時間が非常に長くなります。そのため数日に分けてプレイが楽しめるように、ゲームの進行状況を途中で保存(セーブ=save)することができます。
セーブは市販されている「メモリーカード」(注:本件メモリーカードとは異なります)に行いますが、これはコマンド「セーブ」を選択することで可能になります。
これにより一度セーブしてゲームを途中で終了させた場合でも、次に起動させる際に
メモリーカードから読込み(ロード=load)することにより、続きから楽しむことができます。
8、本件ゲームソフトの仕組み・構造
本件ゲームソフトの仕組み・構造を次の3つに分けて、説明します。
(1)、序(はじめ)
本件ゲームソフトを初めてプレイする際は、まずプレイヤーの名前(姓・名・あだ名)および誕生日、血液型を入力することが必要となります。また、この名前入力の持つ意味は次のとおりです。
@ 主人公であるプレイヤーに個性を持たせる。
A プレイヤーの本件ゲームソフトに対する感情移入度を高める。
B ゲームの進行状況に応じて、呼ばれ方が変わってくるため、プレイヤーに、より高
い現実性を与え、本件ゲームソフトに対する思い入れを深くする要素を持つ。
(呼ばれ方の変化:「姓」君 → 「名」君 など)
本件ゲームソフトは、勉強や運動を通して自分を磨いていき、好意を抱いた女の子が理想とするタイプに近づくことが重要になりますが、各コマンドを通して磨いていった結果は、画面上部の「プレイヤーのステータス表示部」に表示されます。
この「プレイヤーのステータス表示部」は、先に4、各パラメーターの説明で述べた9種類のパラメーター数値を表示しており、初めてプレイする場合は、プログラム上で設定されている初期値となります(初期値については前述のとおりです)。
プレイヤーが各コマンドを実行することにより、これらのパラメーターは変化し、この「プレイヤーのステータス表示部」に表示されます。
プレイヤーは、この「プレイヤーのステータス表示部」に表示された各パラメーターを
見ることにより、補うべき点、または自分の優れている点等を把握し、好意を抱いている女の子に気に入られるように各コマンドを実行していくことになります。
(2)、破(中)
名前等を入力し終わると、1年生の入学式へと画面が切り替わり、ここから3年間の高校生活がスタートすることになります。
平日は、勉強(文化系、理科系、芸術系)・運動・部活・おしゃれ・遊び・休養のコマンドを選択することで、自分の各パラメーターをあげていくことが主となります。
これらパラメーターの変化(=プレイヤーの状態)は、前述のとおり画面上部の「プレイヤーのステータス表示部」に表示されます。
選択したコマンドに対応してパラメーターの数値は上昇(但し、『ストレス』のパラメーターは『休養』コマンド選択により下降する)していきますが、その他のパラメーターも変化します。例として、文化系学習コマンドを選択すると文化系パラメーターは上昇するが、一方でストレスのパラメーターも上昇してしまうことが挙げられます。また、反対にストレスのパラメーターを下降させるために休養コマンドを選択すると、容姿等のパラメーター数値が下降するなどの現象も現れます。
従って、プレイヤーは「プレイヤーのステータス表示部」を見て、バランスを取りながらコマンドを実行していき、好意を抱いた女の子の理想とする男性像に近づいていくように、プレイヤー自身の能力値を高めていくことが必要になります。
なお、主人公(プレイヤー)も人間であるため『体調』『ストレス』のパラメーターを無視して進めると、病気・けが・ノイローゼの原因となります。病気・けが・ノイローゼになると、本来の実力が発揮できなくなります。
休日には、電話をかけたりデートすることが可能となります。まずデートするためには電話して約束しておくことが必要になりますが、女の子の電話番号は初期状態では幼なじみである藤崎詩織のものしか知らないため、親友である早乙女好雄から聞き出すことが必要となります。
この様にして電話番号を知ると、電話をかけてデートの約束と取り付けることができます。デートを申し込むには電話で日にちを指定し、目的地(デート場所)を指定することが必要になります。但し、女の子のスケジュールの都合によっては当然のことながら断られることもあります。
デートの約束を取り付け、デート当日の朝になるとデートのコマンドを選択できるようになります。このときに他のコマンドを選択するとデートをすっぽかしたことになり、評価は下がってしまいます。
デート中には、女の子の発言に対して返答を要する場合(三者択一)や、行動(例:遊園地にてどの乗り物に乗るか等)を決定しなければならない場面が現れることがあります。ここでの返答や行動によっても評価が変化します。
その他、学校帰りに女の子と一緒に下校したり(同伴下校)、また女の子の誕生日にはプレゼントを渡したりすることもできます。
この同伴下校や誕生日プレゼントは主人公(プレイヤー)の自由に決めることができ、同伴下校のお誘いを断ったり、誕生日にプレゼントをしないことも決定できます。また、誕生日プレゼントの内容も主人公(プレイヤー)が選択することができます(三者択一)。
これらのデートや、同伴下校、誕生日プレゼント等は好意を抱いた女の子を優先させることが可能ですが、とは言え、特に好意を抱いていない女の子をないがしろにすると、機嫌を損ね、ひいては評価がさがることにつながります。
従って、好意を抱いた女の子だけとデートしたり同伴下校、誕生日プレゼント等を行うだけでなく、周囲の女の子からの評価を気にしながら行動することが必要となります。
また、当然のことながらきらめき高校には学校行事(テスト、体育祭、文化祭等)もあり、これらの結果によっても女の子からの評価は変化します。
主人公(プレイヤー)の状態(学力、運動能力、ストレスの度合い等)は、画面上部の「プレイヤーのステータス表示部」により常に確認は可能な状態にありますが、このほかにも親友の早乙女好雄に電話することにより、女の子の主人公(プレイヤー)に対する評価も確認することができます。
女の子の主人公(プレイヤー)に対する評価は7段階で表示されますが、これにより好意を抱いている女の子が主人公(プレイヤー)に対してどの様な評価を下しているかを確認することが可能であると同時に、その他の女の子が機嫌を損ねているか否かも確認することが可能です。この評価も確認しながら上述のデート、同伴下校、誕生日プレゼント等を行っていくことが重要と言えます。
(3)、急(終わり)
上述のとおり、勉強・運動・休養・電話・デート・テスト・体育祭・文化祭等をこなしながら過ごしていくと、3年生の3月1日に卒業式を迎えることになります。
きらめき高校に伝わる『卒業の日、校庭のはずれにある古い大きな樹の下で女の子から告白して生まれたカップルは永遠に幸せになれる。』という伝説があるとおり、この日に女の子から愛の告白を受けることが本件ゲームソフトの最終的な目標であるわけですが、果たして本当に好意を抱いた女の子から愛の告白を受けることができるか否かはこれまでに過ごしてきた3年間の日々の行動・発言が決め手になってきます。
すなわち好意を抱いた女の子が持つ理想のタイプの条件を満たしていることが必要となりますが、ここでは単に画面上部の「プレイヤーのステータス表示部」に表示される各種パラメーター数値が条件を満たしているだけではなく、デートの回数、健康状態(ノイローゼや病気のチェック)、特定のイベント経験の有無の条件を満たす必要があります。
これらの条件を満たしていれば、卒業式の日に伝説の樹の下で愛の告白を受けることができますが、満たさなかった場合は親友の早乙女好雄と家路につくことになります。
さて、本件ゲームソフトでは、前述のとおり幼なじみである藤崎詩織から愛の告白を受けることが最終目的であるとされていますが、しかしながらプレイヤーが藤崎詩織の他に好意を抱いた女の子がいれば、その女の子から愛の告白を受けられるように行動をしていくことは可能であり、これは現実世界でも同様です。
つまり、本件ゲームソフトでは最終目的とする女の子は必ずしも藤崎詩織である必要はなく、プレイヤー自身が心の中で女の子を選択し、行動することができるのです。
第3.本件メモリーカードの使用による本件ゲームソフトの仕組み・構造の改変について
1、プレイステーション用のメモリーカード一般の説明
(1)定義
市販されている「メモリーカード」とは、(株)ソニー・コンピュータ・エンタ
テインメントから発売されて、その発売時点においてデータが何等記憶されていな
いものをいいます。
(2)構造
データの記憶単位である「ブロック」が1から15まで合計15ブロック用意さ
れています。よって、1つの「メモリーカード」には、最大で15個のデータを保存 することができます。
(3)意義
「メモリーカード」は、プレイステーション(ハードウエア)が、電源を切られ
た後でもデータを保存することのできる不揮発性のメモリを内部に持たない構造で
あることから、外部メモリとして用いられるものです。このカードメモリの使用
により、完全な終了までに長くかかるようなゲームソフトウエアであっても、プレイ
ヤーの都合に合わせて何度でも一時的終了及び再開始が可能となります。
(4)使用方法
a.ゲームソフトウエアの一時的終了時
プレーヤーがゲームを一時的に終了させたいときに、プレイヤーがゲームを
行った結果生じるデータを「メモリーカード」に保存します
b.ゲームソフトウエアの再開始時
プレーヤーが一時的に終了しているゲームを再開始したいときに、「メモリー
カード」に保存されている上記データをプレイステーションで読み込む(ロー
ド)します
2、本件メモリーカードについて
(a)、ブロック1〜11
@、本件メモリーカードのブロック1〜11に含まれるデータのうちプレイヤーに見えるデータ部分と本件ゲームソフトが予め設定した初期状態との対比
以下の各比較表の通りです。
なお、ここで注目すべきなのは、本件メモリーカードのブロック1〜11に含まれるデータを読み込み(ロード)すると、1995年4月9日という入学時時点から5日しか経過していない時点からスタートすることと、にもかかわらず或る項目の数値が999になっていることです。
(1)、ブロック1と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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(2)、ブロック2と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック2は「紐緒結奈」のキャラクターに
合ったステータスを設定してあるということになっています。
(3)、ブロック3と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック3は「鏡魅羅」のキャラクターに
合ったステータスを設定してあるということになっています。
(4)、ブロック4と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック4は「片桐彩子」のキャラクターに
合ったステータスを設定してあるということになっています。
(5)、ブロック5と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック5は「清川望」のキャラクターに
合ったステータスを設定してあるということになっています。
(6)、ブロック6と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック6は「古式ゆかり」のキャラクター
に合ったステータスを設定してあるということになっています。
(7)、ブロック7と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック7は「美樹原愛」のキャラクターに
合ったステータスを設定してあるということになっています。
(8)、ブロック8と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック8は「早乙女優美」のキャラクター
に合ったステータスを設定してあるということになっています。
(9)、ブロック9と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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(10)、ブロック10と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック10は「如月未緒」のキャラクター
に合ったステータスを設定してあるということになっています。
(11)、ブロック11と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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(b)、ブロック12、13
@、本件メモリーカード・ブロック12、13に含まれるデータのうちプレイヤーに見えるデータ部分と本件ゲームソフトが予め設定した初期状態との対比
以下の2つの比較表の通りです。
下記比較表のとおり、また本件メモリーカードのパッケージにも明記されているとおり、ブロック12、13はエンディング直前データということになっています。
すなわちこれは、ブロック12、13に保存されているデータを使用(読込=ロード)すれば、誰でも容易にエンディング(=本件ゲームソフトが最終的に目標としている"伝説の樹の下"で愛の告白を受けるシーン)を見ることができるようになるというものです。
(1)、ブロック12と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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※本件メモリーカードパッケージによると、ブロック12は「伊集院レイ」のエンディン
グ直前データということになっています。
(2)、ブロック13と本件ゲームソフトにおける初期状態との比較
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本件ゲームソフトの初期状態 |
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B、本件メモリーカード・ブロック12、13の評価
上記比較表のとおり、このブロックを読み込むことにより、ゲームは卒業間際、すなわち"伝説の樹の下"で愛の告白を受けられるか否かという場面から始めることができるようになります。
そして実際にこのブロックを読み込んでプレイさせると、ゲーム内時間で1週間程度で愛の告白を受けることができてしまいます。
すなわち、本件ゲームソフトでは各パラメーターと各コマンドの関係、さらには女の子の個性・特徴等を設定し、これらの特徴等とプレイヤーの態度・行動との関係を緻密に計算してエンディングまで導くという過程があるにも拘わらず、本件メモリーカード・ブロック12、13を読み込む(ロード)することにより、これらの過程を一気に飛ばしてしまうということができるようになっています。これは本来プレイヤーが試行錯誤しながら好意を抱いた女の子に近づき、最終的に愛の告白を受けるという最も苦労し、また楽しみながら進めていく高校3年間の生活を無くしてしまうもので、恋愛シミュレーションゲームとは呼べない類のものに化けてしまいます。
また、ここでは注目すべき点が他にもあります。上記比較表を見ていくと、ブロック
12は「伊集院レイ」のエンディング直前データで、ブロック13は「藤崎詩織」のエンディング直前データと記載されており、確かにこれらを読込(ロード)してプレイすると、その通りの結末(エンディング)を容易に見ることができるのですが、比較表記載の数値では、両者にそれほど大きな違いがありません。
ブロック12とブロック13の数値(目に見える数値)には大きな違いがないにも拘わらず異なる結末を迎えるのは何故か?
これは、本件ゲームソフトでは文化系学習や運動、休養により「プレイヤーのステータス表示部」という目に見える数値を変化させるだけでなく、デートや同伴下校、各種イベント、さらにはこれらの中で生じる発言選択の結果、そして女の子の評価という画面には現れないデータもエンディングに関係しているためです。
すなわち、本件メモリーカードのブロック12、13では目に見える数値(データ)としての上記比較表に記載のものだけではなく、デートの回数・中身や他の女の子の評価などに関するデータ(しかも、ブロック12、13にはそれぞれ、伊集院レイ、藤崎詩織の告白を受けるのに有利なデータ)も含まれているということになります。
本来ならば、本件ゲームソフトにおいて最終的に愛の告白を受けるには、女の子の趣味や特徴に合わせた行動だけでなく、電話やデートなども非常に重要な要素となり、これらを行う3年間という過程が非常に重要であるにも拘わらず、本件メモリーカード・ブロック12、13を読み込むことで、本件ゲームソフトが最も苦心し、重点をおいている3年間の高校生活を一気に素通りするという、本件ゲームソフトの本質を削除するものであると評価できます。
第4、最後に
最後に、ちょっと不思議な現象として、
本件メモリーカードの使用により、本件ゲームソフトのプログラム自体は改変されないのに、どうして、本件ゲームソフトをコンピュータを使って実行した結果である映画著作物は改変されたと言えるのか、映画ビデオや音楽CDでは、そんなことは到底考えられないではないか、
という問題があります。
これは、まさしくコンピュータの構造の特殊性に由来するものです。つまり、ビデオカセットレコーダーやCDプレーヤーなどのこれまでの再生機器が映画ビデオや音楽CDの中身を直接再生処理するものであるのに対し、コンピュータはプログラムの中身(命令やデータ)を、いったんRAM(Random
Access
Memory)というメモリに保存してから、その上で演算処理するというこれまでの再生機器には見られない特異なシステムとっているからです。
もう少し、この点を説明したいと思いますので、まず、本件ゲームソフトと本件メモリーカードが実行されるときに、本件ゲームソフトを構成するプログラム(命令)と画像及び音と本件メモリーカードに記憶されているデータがどういう流れをたどるかを、図解により説明します。
A.本件ゲームソフトだけ実行した場合
ゲームの開始にあたって、まず、本件ゲームソフトを構成するプログラム(命令)と映像や音のデータは、一度、メインメモリであるRAMに保存されます。
次にゲーム開始とともに、プレイヤーがコントローラーを介して命令を入力すると、それがRAMに保存され、これらのプログラム(命令)やデータがCPU(Control
Processing Unit,中央処理装置)によって演算処理されます。そして、その結果が映像や音としてモニターやスピーカーに出力されます。
B.本件ゲームソフト及び本件メモリーカードを実行した場合
さらに本件メモリーカードも実行した場合、ゲームの開始にあたって、本件ゲームソフトを構成するプログラム(命令)と映像や音のデータのみならず、本件メモリーカードのデータもともに、メインメモリであるRAMに保存されます。
次にゲーム開始とともに、プレイヤーがコントローラーを介して命令を入力すると、それがRAMに保存され、そこで、RAMに保存されている本件ゲームソフトと本件メモリーカードのプログラム(命令)やデータがCPUによって演算処理されます。そして、その結果が映像や音としてモニターやスピーカーに出力されます。
すなわち、本件ゲームソフト及び本件メモリーカードを実行した場合、確かに本件ゲームソフトのプログラム自体は改変されません。しかし、本件ゲームソフトをコンピュータを実行するプロセスで、本件ゲームソフトを構成するプログラム(命令)と映像や音のデータはRAMというメモリの中にいったん保存され、かつ本件メモリーカードに記憶されているデータも同じRAMというメモリの中にいったん保存されるのです。
それから、RAMに保存されたこれらの命令とデータがCPUによって処理され、その結果が映像や音としてモニター・スピーカーに出力されるのです。
すなわち、ゲームソフトをコンピュータで楽しむ場合、音楽CDや映画ビデオのようにCDやビデオの中身をダイレクトに再生するのとはちがい、ゲームソフトの中身はいったんRAMというメモリの中に保存された状態になり、そこからCPUによっていわば再生に向かって処理されるのです。ここに、本件ゲームソフトのプログラム自体には何ひとつ手を加えないにもかかわらず、コンピュータを実行した結果得られる映画著作物に改変が実現する秘密があります。つまり、ゲームソフトを実行するプロセスでRAMというメモリの中に改変をもたらす命令なりデータなりを送り込めさえすればそれでいいのです。それを実現したのが、本件メモリーカードです。
その意味で、本件メモリーカードは、従来の再生機器ではあり得なかった、RAMというメモリの特性をフルに活用した新しい改変のスタイルといえましょう。しかし、ゲームソフトを製作する者にとって、作品の意義はプレイヤーが鑑賞する、あくまでもモニター・スピーカーに出力された映像や音のレベルにあります。従って、我々にとっては、音楽CDや映画ビデオの場合の改変のように、CDやビデオやCD-ROMのレベルで改変が行われようが、本件のようにRAMというメモリのレベルで改変が行われようが、それがモニター・スピーカーに出力された映像や音を勝手に改変してしまうものである以上、それは許しがたいことです。その意味で、本件メモリーカードも許すわけにはいかないのです。
以上の通り、陳述します。
1997年2月26日
弁護士 柳原敏夫 殿
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