債権者準備書面 (2)
----タイガーマスク無断続編作成事件----
東京地裁平成5年(ヨ)第2538号著作権侵害差止仮処分申請事件
事件番号 | 東京地裁民事第29部 | 平成5年(ヨ)第2538号 著作権侵害差止仮処分事件 |
当事者 | 債権者 | 辻なおき |
債務者 | 真樹日佐夫ほか2名 | |
申立 | 93年 5月23日 | |
決定 | 94年 7月 1日 | 申立を認める。 |
債権者 辻なおき
こと
辻直樹
債務者 真樹日佐夫こと
高森真士
外二名
平成5年10月6日
右債権者訴訟代理人
弁護士
柳 原 敏 夫
東京地方裁判所
民事第二九部 御中
準 備 書 面 (2)
本件漫画のキャラクターの画期性及び債務者らの本件続編作成行為の異常性について、次のとおり、ひとこと言及する。
一、本件漫画のキャラクターの画期性について
改めて強調するまでもないが、本件漫画のキャラクターは、漫画のベテラン編集者が証言する通り、わが国の漫画史上に残る傑作のひとつにほかならない(疎甲第二八号証参照)。
しかるに、ともすると今日においてはこのことが忘れ去られ、ごく当り前のキャラクターのひとつと思われがちである。
しかし、それはかつて本件漫画のキャラクターが画期的であったが故に、大衆の圧倒的な支持を得、普遍性を獲得したがために今や当り前のキャラクターのひとつとなったものであり、ちょうど鉄腕アトムやドラエモンのキャラクターが今ではごく当り前のキャラクターになっているのと同じことである。かつてのキャラクターが現在当り前のキャラクターになっていることは、そのキャラクターの画期性を証明するものにほかならない。そのキャラクターが初めからありきたりのものであれば、とっくに消滅しているからである。
つまり、本件漫画は、主人公が本物の迫力あるトラの頭をマスクとしてかぶり、黒タイツに黒パンツをはき、リングに登場する時にマントを着用するなどという画期的なキャラクターによって、当時のプロレス漫画に一世を風靡したのであり、そのキャラクターの画期的な創作性が、今なお著作権法上も十分に保護されなければならないことは言うまでもない。
二、債務者らの本件続編作成行為の異常性について
これまた改めて強調するまでもないが、債務者らの本件続編の作成行為は、新旧ふたりのベテラン編集者が口をそろえて証言する通り、わが国の漫画史上例を見ない、異例中の異例の出来事にほかならない(疎甲第二七号証・同第二八号証参照)。
つまり、今回のような続編の無断作成行為といった著作権侵害行為の紛争や訴訟がこれまでわが国で起きなかったのは、何もわが国の漫画界において同種の行為が日常頻繁に行われていて特に問題視されていなかった訳では全くなく、その反対で、わが国の漫画界においては凡そこのような非常識な行為をする者が誰一人としていなかったまでのことである。
その意味で、今回の事態はまさに異例中の異例の出来事であり、いわばわが国の漫画界におけるクーデターともいうべき暴挙にほかならない。それ故、これはわが国の漫画界の良識にかけて絶対許すことのできない出来事であり、かかる比類なき異常な行為が一刻も速やかに除去されるべきことをここに重ねて強調する次第である(疎甲第一四号証・同第一五号証・同第一六号証参照)。