通告書2
----タイガーマスク無断続編作成事件----
東京地裁平成5年(ヨ)第2538号著作権侵害差止仮処分申請事件
事件番号 | 東京地裁民事第29部 | 平成5年(ヨ)第2538号 著作権侵害差止仮処分事件 |
当事者 | 債権者 | 辻なおき |
債務者 | 真樹日佐夫ほか2名 | |
申立 | 93年 5月23日 | |
決定 | 94年 7月 1日 | 申立を認める。 |
通 告 書
拝啓、辻直樹(以下通知人という)の依頼により通知人の代理人弁護士として、本年四月五日より日刊新聞「東京スポーツ」に連載を開始した漫画「タイガーマスクTHE
STAR」(以下続著作物という)について次の通り通告いたします。
申すまでもなく、漫画「タイガーマスク」(以下本著作物という)は子供たちに爆発的人気を呼んだベストセラー作品であり、通知人は本著作物の著作者であり、本著作物が通知人にとって代表作でもあります。
ところが、貴社は続著作物の連載直前の三月三〇日に至ってようやく通知人に連絡を取り、そこで初めて続著作物の制作・連載について通知人の許諾を求めてきましたが、しかし通知人がこれを拒否するや、貴社は一転して通知人を無視し、通知人の許可なく、続著作物の制作・連載を強行するという態度に出ました。
しかし、通知人は直ちに事を起さず、慎重を期して、連載が開始された続著作物の綿密な作品分析をここ一ケ月間続けてきました。そして、これまで明らかにされた内容から、続著作物は通知人が心血と愛情を注いで作り上げた本著作物の主人公タイガーマスクのユニークなキャラクターをそっくりそのまま利用したものであることが判明しました。
従って、続著作物を制作・連載する行為は本著作物の内面形式である創作的なキャラクターを無断で利用する翻案権侵害行為に該当するのみならず、通知人の明白な利用拒絶の意思表明にもかかわらず、これを無視して制作・連載に出た行為は極めて悪質な違反行為と言わざるを得ず、かかる違反行為が民事はもとより、刑事上の責任をも免れないことは明白であります。
加えて、もともと本著作物は、純真な子供向けに、ヒューマニズムを高らかにうたいあげた極めて純真でヒューマンな作品でありますが、しかし続著作物は連載一ケ月にして女性の裸、サド、シャブが登場し、本著作物の純真でヒューマンな本質とはとうてい相容れない性格のものであることが判明しました。
従って、本著作物の純真でヒューマンな本質を甚だしく損うこのような続著作物の制作・連載行為は、通知人が本著作物に対し抱く並々ならぬ心情を著しく毀損するものであるのみならず、通知人の著作者人格権を甚だしく侵害するものであり、かような違反行為を通知人は断じて容認することができません。
よって、通知人は貴社に対し、続著作物の連載行為を即刻中止されることを要求し、かつ本通告書到達後一週間以内に右要求に対する回答を書面にて行なわれることを請求いたします。
もし、右連載行為を中止されず、または右期日までに誠意ある回答がない場合には、不本意ながらただちに民事・刑事等の法的手段をとらざるをえませんので、念のため申し添えます。
敬 具
平成5年4月27日
東京都港区虎の門○丁目○○番○号
辻直樹 代理人
弁護士 柳原敏夫
東京都江東区越中島○丁目○○番○号
株式会社 東京スポーツ新聞社
代表取締役 ○○×× 殿