インターネットの著作権問題
----メールによる質疑応答1----

8.19/97



コメント
 インターネットの現場で仕事をしている人から現場で生じた質問を受け、それに対する回答を試みたもの。 



著作権のご相談の件ほか

大庭さんへ

残暑見舞い申し上げます。
また、暑くなりましたね。

昨日、かねてからの胃ガンの検査の結果が出まして、幸い、シロでした。嬉しさよりもホッとしました。お騒がせしましたが、どうしたわけか、どっと俗気が戻ってきまして、今さら我ながら、本性をかいま見たような気分です。
でも、また、いろんなことをやれると思うと嬉しいです。

さて、大変遅くなりましたが、著作権のご相談の件ですが、大庭さんたちがやろうとしているシステムを理解するまでに(なにせイメージがないものですから)結構時間がかかりまして、でも、一度分かればどうってことないのです、今は大丈夫です。

それで、この新しい、苦肉の策ともいうべきシステムの著作権法の評価ですが、確かにこれが著作権法の何条に違反すると言えるかというと、単純には言えないと思います。でも、法的価値判断を下してみたとき、これが著作権法に抵触しないとは思えないのです。その意味で、これは未知の著作権の問題になりますが、それに対する最終的な判断は、やっぱりこれはいけない、ということに落ち着くのではないかと思います。

ただし、この場合でも、もし、WWWサーバーにアクセスして新たに編集した映像を見れる人の範囲がその編集した人及びその家族といった限定されたものであれば、いわゆる私的利用(著作権法30条)として許されるでしょうが、でも、そんな狭い範囲の人しかアクセスできないはずはないですね。

その場合、誰がどのような著作権侵害の責任を問われるかということですが、まず、自分で新たに映像を編集したユーザーですが、彼は、これをVDOサーバから映像を再編集しただけではそれだかで著作権侵害は問われないでしょう(著作権法30条、43条の私的使用)。しかし、この再編集したものを自分のホームページにアップロードした段階で、著作権侵害の責任(映像の無断使用と無断改変の責任)を問われることになりましょう。これはもっと一般的に言うと、他人の著作物を自分のホームページにアップロードした場合の著作権問題ということになります。

 で、この場合、次に、ユーザー以外の誰かが著作権侵害の責任を負うことになるのかがさらに問題となります。この点は、もうちょっと事実関係を詳しく聞かないと答えられないのですが、ひとつはVDOサーバの主催者、もうひとつはVDO端末PCの編集ツールの製作・配布者ですが、ごくおおざっぱにいいますと、編集ツールなるものが単純なビデオ編集ツールならば著作権侵害の問題は起きませんが、これがもしVDOサーバの映像のみの編集しかできないようなものですと、ちょっと問題が生じます。

 この問題は、昨今話題になっている、一般ユーザーの著作物の無断利用が生じた場合、これに関連してメーカーなどがいかなる場合に著作権侵害の責任が生ずるかといった問題です。例えば、カラオケボックスでユーザーが好きな歌を歌う場合、音楽著作物の無断利用をめぐって、カラオケボックスの設置者に著作権侵害の責任が生ずるか、といった問題です(昨年、この責任を認めた東京地裁の決定が出ました)。

私も、今年の初めから、これと同じ問題をめぐって、1件、裁判を起こしていまして(「ときめきメモリアル」というゲームの中身を編集してしますメモリーカードの発売をめぐる著作権裁判です)、来週、その判決が大阪であります。

おそらく、この大急ぎのコメントについて、再度、いろんな意見があるかと思います。これは或る意味では、著作権問題の宝庫とも言うべき事例です。山ほど議論になるでしょう(NTTのテレビ会議でも使って議論してみたいくらいです)。また、質問があったら、どうぞ。

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