鄭義信と新宿梁山泊
−−戯曲「それからの夏」「人魚伝説」著作権侵害事件−−
作家の著作権を否定し、無断上演・無断改変をくり返した劇団に対して、作家の権利と人間の尊厳を回復する闘い


since 2008. 1.31
last update 2008.10.08

本件事件の概略とあらすじ

裁判の報告

本裁判の被告鄭義信氏自身と劇作家・日本劇作家協会専務理事の平田オリザ氏による、本裁判の報告文書です。

1、鄭義信氏「許されざるもの−−僕と新宿梁山泊との、著作権を巡る裁判について−−」(雑誌「シナリオ」2008年8月号
2、平田オリザ氏「劇作家の尊厳−−鄭義信と新宿梁山泊の著作権を巡る裁判について−− 」(雑誌『せりふの時代』  2008/VOL.48 夏号雑誌「シナリオ」2008年8月号

(10.8/08 文責 鄭義信代理人 柳原敏夫

裁判報告会のお知らせ

2008年4月18日に、原告の(本訴について)請求の放棄、(被告からの反訴について)請求の認諾により、本裁判は被告鄭義信氏の主張を無条件で全面的に認める形で幕を閉じましたが、演劇界の著作権のあり方を問い直した本裁判の報告会を以下の通り、開催します。関心のある方は奮ってご参加下さい。
                記
1、日時 6月30日(月)午後2時より
2、場所 花伝舎(→地図
3、参加者
  本訴被告(反訴原告)         鄭義信氏
  劇作家・日本劇作家協会専務理事 平田オリザ氏
  協同組合日本シナリオ作家協会事務局長 金寿美氏
  鄭義信氏訴訟代理人         柳原敏夫

(6.29/08 文責 鄭義信代理人 柳原敏夫


速報−−事件の終結のお知らせ−−

2008年4月18日、第6回目の期日(5回目の弁論準備手続)で、原告の新宿梁山泊が、被告鄭義信氏の主張を無条件で全面的に認める意思表示をしたため、事件は被告鄭氏の無条件の全面的勝訴の内容で幕を閉じました。
具体的には、
(1)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」の著作権及び著作者人格権は鄭義信氏にあること、
(2)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」を上演する権利は新宿梁山泊にないこと、
が確定しました。
法律的には、原告新宿梁山泊が、
(1)に関して、被告反訴について「請求の認諾」をし、
(2)に関して、原告本訴について「請求の放棄」をしたため、上記内容が法的に確定したものです。
(正式な内容は、判決文に相当する請求の放棄・認諾調書を参照)

昨年6月に上演差止を求めて提訴して以来10ヶ月を要しましたが、上記結果により、鄭氏の原告在団中の代表作品についての著作者問題が公に解決されました(その詳細は、下記のWhat'S Newを参照)。

(5.2/08 文責 鄭義信代理人 柳原敏夫


概略

本件は、劇作家がかつて所属した劇団のために執筆した戯曲を、退団後も同劇団によりくり返し無断上演・無断改変されたので、同劇団に「以後、上演許可はしない」と通告したところ、同劇団が「それらの戯曲の著作者は劇団の役者たちであり、劇作家は叩き台を用意し、役者たちの共同作業を書き留めた書記にすぎない。だから上演許可も無用」と全面的に開き直るに至ったという、劇作家の著作権と人間の尊厳の根本が問われる事件である。

あらすじ


 鄭義信という作家をご存知の人も多いと思う。劇作家であり、脚本家である。
その名前を知らない人でも、映画「月はどっちに出ている」「岸和田少年愚連隊」(1996年)「愛を乞うひと」「血と骨」を知っている人は多いと思う。これらの映画の脚本を書いた人である。

 その彼が、今から20年以上前、劇団「新宿梁山泊」の旗揚げに参加し、1995年1月に退団するまで、彼の代表作の1つである「人魚伝説」、「それからの夏」「千年の孤独」などの戯曲を執筆し、同劇団で上演したが、彼の退団後、「新宿梁山泊」は次の通り、彼の作品を無断で上演し、のみならず無断で改変した。
@.1995年4月、「人魚伝説」新宿公演で無断上演並びに無断改変
A.1996年8月、「愛しのメディア」韓国公演で無断上演並びに無断改変
B.1998年9月、「人魚伝説」北京公演で無断上演
C.1999年7月、「千年の孤独」新宿紀伊国屋ホール公演で無断改変

 とくに、4番目の「千年の孤独」新宿紀伊国屋ホール公演は、それまでと同様、「新宿梁山泊」は鄭氏に無断で上演しようとしていたところ、国内公演のために事前に発覚するに至り、鄭氏の強い要請で、無断改変しないことを約束させる覚書を締結した。にもかかわらず、「新宿梁山泊」はこの約束を無視し、無断で、劇中の女性役を男性役に変えるという作品に大きなダメージを与える重大な改変に出た。その上、その事実を隠ぺいするため、鄭氏に招待状、公演案内、公演チラシ等を一つも送ってこなかった。そこで、その身勝手さに激怒した鄭氏は、「新宿梁山泊」に『以後、鄭義信作品の上演は一切認めない』旨を伝えるに至った。


 それから5年たった2005年3月、「新宿梁山泊」は鄭氏に彼の「人魚伝説」の韓国上演を一方的に通告してきた。
しかし、鄭氏に、5年前の『以後、鄭義信作品の上演は一切認めない』態度を変更する気は全くなく、これ以上の無断上演・無断改変を防止し、自作品を守るために、協同組合日本シナリオ作家協会を通じて、改めて上演中止を申し入れた。すると、これを不服とする同劇団は弁護士を立て、同弁護士によると、2005年の日韓友情年の招聘作品として「人魚伝説」を上演するということだったが、しかし、同劇団が上記招聘作品として実際に文化庁に助成金を申請したのは「人魚伝説」とはちがう別作品であり、その点も追求すると、同劇団の弁護士は「提案についてご同意いただけないとのことですので」という理由で「人魚伝説」の上演中止を伝えてきた。かくして、同劇団の弁護士は鄭氏の著作権、上演権を認め、ひとまず決着を見た。

 しかし、鄭氏の著作権、上演権を認めたのは「新宿梁山泊」の弁護士だけで、同劇団自身はそうでなかったことがその後明らかとなった。
2年後の2007年4月、同劇団は鄭氏に「それからの夏2007」の上演をまたしても一方的に通告してきたからである((原題は「それからの夏」であり、題名からして無断改変だった)。
 鄭氏は、直ちに、シナリオ作家協会を通じ、彼の7作品について上演不許可と改変禁止を通告した。すると同劇団から、そもそも鄭氏の作品は「パクリ」「盗作」であり、その上演に鄭氏の同意は不要である旨を内容とする書簡が届けられた。凡そ信じ難い内容であり、再度、「上演を許可しない。無断で強行するなら法的手段を取る」旨の警告文を出したところ、同劇団は「それからの夏 2007」を8月1日から上演するという仮チラシが送りつけてきた。
 鄭氏の明白な上演不許可の意思を完全に無視した同劇団のこのやり方に対し、直ちに「6月26日までに公演中止の回答なき場合は、公演差止の仮処分申立を行う」旨の最後通告書を送付したが、同劇団から何の回答もなかった。

 かくして、自主的な解決の道は閉ざされ、舞台は本上演の中止を求める仮処分の裁判手続に移行した。


 2007年7月6日、鄭氏は、「新宿梁山泊」の「それからの夏2007」の上演差止を求めて、東京地方裁判所に仮処分の申立を行なった。7月18日、第1回目の裁判(審尋)が開かれ、同劇団の新たな弁護士は、次の通り主張した。
1、戯曲「それからの夏」の著作権が鄭氏にあることは認める。
2、同劇団に今回の上演の権利があるのは、鄭氏が退団時に言明した「一声かけてくれれば、許諾する」が現在もなお有効であることによる。
3、同劇団は、鄭氏退団後、彼の作品の無断使用も無断改変も一切していない。だから、信頼関係を壊すような事実はなく、鄭氏の退団時の言明は依然維持されている。
 そこで、3の事実の有無が主要な争点となり、審理の結果、7月24日の第2回目の裁判の席上、裁判官から鄭氏の言い分を認め上演差止の判断をする旨の表明があり、念のため、和解が可能かどうかを同劇団に確認したところ、負けを知った同劇団はあっさり以下の条件で和解に応じ、一転して和解成立となった(注1)。
1、「新宿梁山泊」は、「それからの夏2007」の上演を中止する。
2、鄭氏が退団時に表明した上演許諾の現在の効力について正式裁判で確定するまでは、同劇団は「それからの夏」を上演しない。

(注1)なお、一部の新聞では、この和解の内容を、「一時中止で和解」とか「[8月に予定していた上演をいったん中止し」と報道した。これは、「新宿梁山泊」の言い分をそのまま書いたのであろうが、明らかに不正確である。和解調書には、「一時」中止とか「いったん」中止といった条件は一切存在しない。そこには「無条件で上演中止」が合意されている。唯一、上演が再開できるのは、鄭氏が退団時に表明した上演許諾が現在なお有効であると正式裁判で確定したときであり、それが認められない限り、未来永劫、上演はしないことを約束するというのが和解の内容である。


 そして、それから約1ヶ月後の2007年8月27日、「新宿梁山泊」は鄭氏に対し、「人魚伝説」と「それからの夏」の上演権が同劇団にあることの確認を求めて、正式裁判を提起してきた。裁判で、同劇団は、「人魚伝説」や「それからの夏」は同劇団の役者たちの共同作品であり、それに対し鄭氏は単なる叩き台を用意し、なおかつ役者たちの共同作業を書き留めただけ(いわば書記にすぎない)と主張した。
 これだと鄭氏はただの書記であり、無権利者である。これは、かつてその劇団に所属し、その劇団のために作品を書いた劇作家に対する最大の冒涜としか言いようがない。あたかも他人の土地に勝手に入り込んで来て、「ここは俺の土地だ。私以外の者の立入を禁ずる」と主張したどこかの無法者たちと同じだからである。
 この間の経過を見てきた平田オリザ氏は、本件について次のように評する。

劇団に所属する劇作家が退団したのちにトラブルとなるケースはこれまでも散見してきましたが、これほどまでに強引なケースというのは寡聞にして聞いたことがありません。
 その背景には、日本の演劇界の風土として、「座付き作家の作品は劇団の共有物である」といった間違った観念が依然としてあり、個人の著作権という概念が浸透していないことがトラブルの原因となっていると思われます
(平田オリザ氏の意見書2頁)。


 劇団に個人の著作権の概念が存在していないというのは、その劇団に人間の尊厳が存在していないのと同義である。その結果、「お前のものはオレのもの」という言い分がいともやすやすと成立する。
 本件訴訟は、踏み躙られた劇作家の著作権を取り戻す闘いであると同時に、踏み躙られた人間の尊厳を取り戻す闘いである。

(1.31/08 文責 鄭義信代理人 柳原敏夫


What'S New(3ヶ月経過したものは→履歴を参照下さい)

劇作家の渡辺えり氏の陳述書(5.7./08)
  以下の事実について、渡辺えり氏の見解を陳述してもらいました(本年3月21日裁判所に提出済み)。
 ・ 原告(新宿梁山泊)のために戯曲を執筆したことがあること。
 ・ 上記作品執筆時の原告の支払とは初演の対価の意味であり、上演権の譲渡の意味ではないこと。
 ・ 再演における金銭の支払とは通常、上演料であり、謝礼と理解することはできない。

原告、本訴について「請求の放棄」、被告の反訴について「請求の認諾」をする意思表示を表明し、事件は被告の無条件全面勝訴の内容で終結(4.18/08)

2008年2月5日の第4回目の期日に、裁判所より原告被告の双方に和解の検討の申入れがあり、以来3回にわたって和解について協議検討した。
被告の鄭氏は、本裁判を支援する劇作家や先輩と検討の結果、本裁判は鄭義信一作家の個人的問題にとどまらないものであり、和解の内容がどうであれ和解という形式ではなく、公的な判断による解決を望みたいという結論に達し、これを裁判所に伝え、4月18日の第6回目の期日で、和解協議は不調となった。

そこで、通常であれば、本裁判は判決に向けて必要な手続を取るべきところ(被告代理人もその積りで、証人申請の準備をしていた)、和解協議が不調となった直後、原告から被告鄭氏の主張を無条件で全面的に認める意思表示が出されたため(注)、本裁判は「請求の放棄」「請求の認諾」とい被告の無条件全面勝訴という形式で、一転して幕を閉じることになった。

(注)
民事裁判に関する法律(民事訴訟法)は、一方当事者が、自ら、無条件で全面敗訴の意思表示をするときには、判決に代えて裁判を終結することができるという規定(請求の放棄・認諾に関する民事訴訟法266条)を設けているため、例外的にこうした事態が発生する。

裁判を起す場合、当事者は、通常、自分が全面的に勝てる或いは少なくとも部分的に勝てるという確信、見通しがあって、裁判を起すものであり、だから、和解協議が決裂した場合には、裁判所の判断(判決)を仰ぐのが通常である。自ら無条件全面敗訴の意思表示をするくらいだったら、通常、始めから裁判なぞ起さない。その意味で、本件は異例である。

思うに、原告もまた、和解協議の中で、裁判所から全面敗訴の判決の見通しを伝えられていたと思われる(それは被告自身が裁判所から同一の内容を伝えられていて、それを前提に和解の内容を検討していたからである)。それゆえ、和解協議が不調になったあと、原告が全面敗訴の判決を下されるくらいだったら、(それと同一の内容と効力を持つ)「請求の放棄・認諾」で幕引きをしたほうがましだと考えたとしても不思議ではない。

しかし、「請求の放棄・認諾」は原告の無条件全面敗訴であり、全面敗訴の判決と内容及び効力は変わらない。
それゆえ、ここから次のような結論を導くことが可能である。
1、法律面
(1)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」の著作権及び著作者人格権は鄭義信氏にあること、
(2)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」を上演する権利は新宿梁山泊にないこと、
が公的に確定したこと。
2、事実面
 或る人が権利を持っているかどうかなどを判断するのが裁判手続である。その場合、裁判所は権利があるかないかを直接判断できない。権利の存否を判断するためには、その権利を根拠づける事実があるかないかを判断することを通じて行なう。
本件で言えば、被告が戯曲の著作権を持つかどうかは、その戯曲を執筆したのが被告であるかどうかという事実の存否(以下、これを「紛争を構成する事実関係の存否」という)を判断することを通じて行なう。
ところで、判決は必ず「紛争を構成する事実関係の存否」の判断を行うのに対し、「請求の放棄・認諾」では、判決と異なり、法的な結論だけ述べるにとどまり、それ以上、「紛争を構成するの事実関係の存否」については立ち入らない。本件で言えば、
戯曲「それからの夏」「人魚伝説」の著作権は鄭義信氏にあること
という権利だけを認めるという形式になっていて、それ以上、鄭氏がその戯曲を執筆したかどうかには言及しない。

しかし、法的な結論が公的に確定された以上、それを根拠づける「紛争を構成するの事実関係の存否」がどうであったのかについても、自ずと明らかにされたも同然である。
本件に即して言えば、
(1)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」の著作権及び著作者人格権は鄭義信氏にあること、
が認められた以上、この結論を根拠づける被告の事実主張である、
戯曲「それからの夏」「人魚伝説」は鄭義信氏が自ら執筆した
事実が認められ、他方で、この結論と矛盾するような原告の以下の事実主張は全て否定されたも同然と言ってよい(なぜなら、事実関係について、そう考えなければ、「2つの作品について鄭義信氏に著作権と著作者人格権がある」という法的な結論と矛盾を起してしまうからである)。
(a)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」は鄭義信氏が先行する第三者の作品からパクって(盗作)して執筆したものであり、鄭氏は著作者ではない。
(b)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」の著作者は原告劇団の役者たちであり、鄭義信氏は単に叩き台を用意し、役者たちの共同作業を書き留めた書記にすぎない。

同様に、
(2)、戯曲「それからの夏」「人魚伝説」を上演する権利は新宿梁山泊にないこと、
という結論については、この上演する権利の存否をめぐって最大の争点となった事実関係、
(a)、「1995年1月の被告の原告退団後に、原告が以下の@からCの通り、被告の作品を無断上演・無断改変した事実があったかないか」
について、原告に上演する権利が認められなかった以上、「こうした無断上演・無断改変は一切なかった」という原告の事実主張もまた否定されたも同然と言ってよい。
@.1995年4月、「人魚伝説」新宿公演で無断上演並びに無断改変
A.1996年8月、「愛しのメディア」韓国公演で無断上演並びに無断改変
B.1998年9月、「人魚伝説」北京公演で無断上演
C.1999年7月、「千年の孤独」新宿紀伊国屋ホール公演で無断改変

のみならず、原告の上演する権利を根拠づけるために原告により新たに主張された、以下の原告の事実主張もまた全て否定されたも同然と言ってよい。
(b)、被告から原告に対し、上記戯曲における上演権の永久的な譲渡があった(具体的には、「人魚伝説」は1990年9月に15万円で、「それからの夏」は1992年8月に25万円で買い取った、と)
(c)、被告は原告に対し、上記戯曲における上演の包括的許諾をおこなった(その具体的な内容は、(b)の譲渡と同様)


※なお、被告代理人も初めての経験だった「請求の放棄・認諾」について、以下の通り、一部のマスコミ報道に誤解があったので、その正しい意義を補足しておきたい。

「血と骨」の鄭義信さんの作品、上演せず 元所属劇団と合意
鄭義信さん作品「上演せず」=元所属劇団が合意−東京地裁

この見出しは「請求の放棄・認諾」を裁判でよく登場する「和解」と混同したものであるが、ほんらい両者は全く異なる。
なぜなら、第1に、和解は、双方の合意により初めて成立するものであるのに対し、「請求の放棄・認諾」は相手方の一存で一方的に宣言するものであり、第2に、和解は双方が歩み寄って妥協するものであるのに対し、請求の放棄・認諾は宣言した者の無条件全面敗訴だから。

また、「請求の放棄・認諾」は「訴えの取下げ」とも全く異なる。
なぜなら、第1に、「訴えの取下げ」とは、最初から訴訟がなかったことにすることで、文字通り、訴訟提起もその結末も何もなかったことにすることである(その代わり、以後、同一の訴訟はできなくなる)のに対し、、「請求の放棄・認諾」は結末として無条件全面勝訴判決と同じ内容・効果が残るし、むろん訴訟があったことも残る。第2に、「訴えの取下げ」は、相手方の同意なしには勝手にできないのに対し、「請求の放棄・認諾」は相手方の一存で一方的にできるものだから。
いわば、戦争でいえば、宣戦布告も戦争終結も何もなく、あたかもずっと平和だったことにするのが「訴えの取下げ」だとすれば、宣戦布告の事実も残り、なおかつ全面無条件降伏という結末も残るのが「請求の放棄・認諾」である。

その意味で、本裁判は原告の「請求の放棄・認諾」により、法的には全面的な決着がついたと言ってよい。

新たに、鄭義信氏から新宿梁山泊に対し、戯曲「人魚伝説」「それからの夏」の著作権・著作者人格権確認の反訴を提起」(2.4/08)

新宿梁山泊が鄭義信氏に対し提訴した「人魚伝説」「それからの夏」の上演権確認訴訟の中で、新宿梁山泊は単に上演権を有するという主張にとどまらず、「人魚伝説」「それからの夏」の著作者はそもそも鄭氏ではない(彼はただの記録係にすぎない)、作ったのは自分たち劇団の役者たちだという主張までするに至った。
ここに至り、鄭氏は、この理不尽極まりない主張から著作者としての自己の権利を守るためには、両作品の著作者が自分であることを裁判上確認してもらうほかないと決断し、本日、その確認を求める反訴を提訴するに至った。‥‥>>反訴状

被告(鄭義信)の準備書面(2.4/08)
  「人魚伝説」「それからの夏」の著作者は鄭氏ではなく、劇団の役者たちであるという原告準備書面1の主張に対する詳細な認否



新宿梁山泊から鄭義信氏に対し提訴された戯曲「人魚伝説」「それからの夏」上演権確認訴訟」(1.31/08)

 「それからの夏」の上演禁止の仮処分事件が上演中止で和解してから約1ヶ月、新宿梁山泊は、鄭義信氏に対し、「人魚伝説」「それからの夏」の上演権が同劇団にあることの確認を求めて、2007年8月27日、本訴(確認訴訟)を提起。
 現在、裁判は進行中。以下は、その記録です(但し、著作権の関係で、新宿梁山泊の書面は一定以外のものは公開に制約があることをご了解いただきたい)。

月日

原 告 (新宿梁山泊)

月日

被 告 (鄭義信)

2007
8.27

訴状

・本件作品の創造者
 被告が原告在籍中に書いた作品はすべて被告を含む役者たちが集団で創作したものである。
・「人魚伝説」の作成過程
・「それからの夏」の作成過程
・被告退団時における著作権と上演権の帰属
・その後の被告の心境・対応の変化
 
 
 



9.3 求釈明1 本件作品が共同著作物であるかどうかが本件裁判の最大の争点であるが、訴状では創作行為の分担について抽象的、一般的な記載があるだけで、2つの本件作品のそれぞれについて、具体的に、特定の誰がいかなる特定の執筆行為などの創作行為を分担したのかその具体的な主張は殆どない。早急にこれを明らかにされたい。



9.4 求釈明2 1、本件裁判は、いわゆる権利能力なき社団による訴え提起であるが、果して原告が権利能力なき社団に該当するのか極めて疑わしい。原告提出の原告の「組織規約」は結成当時作成となっているが、当時、これに参加した被告は結成メンバーとそのような組織規約を作成したこともなければ、組織規約の存在を聞いたことも見たこともなかった。
2、本件作品が被告と《役者らおよび演出家》の共同著作物だと主張するのであれば、そこから、どうして「原告が本件作品の上演権を有する」という請求の趣旨が導けるのか、その関係を明らかにされたい。



9.20

答弁書

被告の反論と求釈明
1、被告からみて、訴状は2つの点で未完成である。
‥‥>>

第1、請求の趣旨に対する答弁
第2、請求の原因に対する答弁
第3、被告の反論と求釈明
第4、原告の当事者能力について
9.26 1 ◆11月2日までに、原告への宿題
1、訴状の請求の趣旨を明確にする。
2、本件作品の上演について、被告から包括的許諾を得ている点、及び包括的許諾を取り消される理由がない点について書面で提出。
3、原告が権利能力なき社団であることの裏付け資料として、文化庁に提出した組織規約や会計の書類を提出。
11.5
準備書面1

証拠説明書3
1、結論
原告は本件作品の上演権を有する。
原告は本件作品の変更をしたことはない。仮にあったとしても、原告が本件作品の上演権を失うものではない。
2、原告の上演権
(1)、原告の結成経過
(2)、本件作品は原告を構成する役者たちの共同作品
(3)、具体的な欠き直し箇所
(4)、「人魚伝説」(甲1〜4)
(5)、「それからの夏」
(6)、被告を著作権者とした理由と原告の上演権
(7)、原告の上演権/退団時のやりとり
(8)、無断上演(4つの公演)
(9)、無断改変(3つの公演)
(10)、劇団「青脈」への無断上演許可
11.5 求釈明3 1、原告準備書面(1)の日付について
2、請求の趣旨について
3、上演に関する包括的許諾について
4、権利能力なき社団の裏付資料について

11.6

第2回

1回準備手続。
◆原告への宿題
1、速やかに、請求の趣旨を明確にすること。
2、次回期日に甲19、20の原本持参
◆被告への宿題
12月5日までに、原告主張に対する認否・反論を提出。

11.9 準備書面2 1、請求の趣旨の変更
2、上演権の帰属
(1)、本件作品は原告の劇団において作成したものであり、著作権は本来原告に帰属すべきところ、岸田戯曲賞の受賞という目的から、被告名義で公表したもの。
(2)、「人魚伝説」は1990年9月、原告が被告に15万円を支払い、上演権を譲り受けた。
「それからの夏」は1992年8月、原告が被告に25万円を支払い、上演権を譲り受けた。
(3)、原告は被告以外の作家に原告のために作品を書いてもらっているが、作品が完成した時に代金を支払って上演権を取得している。
(4)、もっとも、再演に際して金銭を交付することはあるが、それは再演に対する上演料ではない。「謝礼」として交付しているもの。
3、上演に関する合意
(1)、仮に2が認められないとしても、「人魚伝説」は1990年9月、原告が被告に15万円を支払ったとき、「それからの夏」は1992年8月、25万円を支払ったときに上演することを包括的に認める合意をしたもの。






 12.5
準備書面1

はじめに 
 被告は、現在のところ考え得る最も信用の置ける第三者の証言を得たので、これを提出する。原告の元劇団員で、女優の村松恭子氏の陳述書(乙1)である。
‥‥>>
第1、はじめに
第2、原告提出の組織規約(甲9)の虚偽について
第3、原告準備書面(1)に対する認否
第4、原告準備書面(1)に対する被告の反論――包括的許諾に関する原告主張への反論――
 
 
 
準備書面2

原告準備書面(2)に対する被告の反論
1、 上演権の位置付け
一般の著作物において上演権は馴染みのない支分権であるが、しかし、こと戯曲に関しては事情が全く異なる。
‥‥>>
第1、原告準備書面(2)に対する認否
第2、原告準備書面(2)に対する被告の反論



証拠説明書1




村松恭子氏の陳述書(乙1) ・ 「人魚伝説」「それからの夏」執筆のプロセス
・ 被告退団時のやり取り
・ 被告退団後の被告作品の上演と改変について
 (1)、1995年「人魚伝説」
 (2)、1996年「愛しのメディア」韓国公演
 (3)、1999年「千年の孤独」新宿紀伊国屋ホール公演




原告ホームページ「新宿梁山泊の軌跡」(抜粋)(乙4) 1996年「愛しのメディア」韓国公演で使用した主要作品が「愛しのメディア」であって、「それからの愛しのメディア」でないこと。



平田オリザ氏の意見書2(乙5) ・ 無断改の具体的検討について
・ 戯曲の上演権の譲渡について
・ 戯曲の上演に関する包括的許諾の合意について
・ 戯曲の再演の支払について



鄭義信氏の陳述書3(乙6) ・ 原告提出の組織規約(甲9)について
・ 「本件作品は原告の役者たちの共同作品だ」という原告主張について
・ 退団時のやり取り
・ 原告の無断上演
・ 原告の無断改変
・ 被告の退団時の声明の撤回と今後の上演拒否
・ 原告準備書面(2)の新しい主張について



12.10 準備書面3

原告は、準備書面(2) で《原告では、被告以外の作家についても原告のために作品を書いてもらっているが、作品が完成したときに代金を払って上演権を取得している》(2頁16行目以下)と主張するが、過去に原告のために作品を執筆したことがある坂手洋二氏と川村毅氏から証言を得たので、提出する。‥‥>>
原告準備書面(2) の《原告では、被告以外の作家についても原告のために作品を書いてもらっているが、作品が完成したときに代金を払って上演権を取得している》という主張が事実に反することを、坂手洋二氏と川村毅氏から証言を得たこと。



証拠説明書2



坂手洋二氏の陳述書(乙7) ・ 原告のために戯曲を執筆した事実。
・ 上記作品執筆時の原告の支払とは初演の対価の意味であり、上演権の譲渡の意味ではないこと。
・ 再演における金銭の支払とは通常、上演料であり、謝礼と理解することはできない。



川村毅氏の陳述書(乙8) ・ 原告のために戯曲を執筆した事実。
・ 上記作品執筆時の原告の支払とは初演の対価の意味であり、上演権の譲渡の意味ではないこと。
・ 再演における金銭の支払とは通常、上演料であり、謝礼と理解することはできない。
・ 戯曲の上演権の譲渡をした経験もなければ演劇界で耳にしたこともない。
・ 戯曲の上演について包括的許諾をした経験もなければ演劇界で耳にしたこともない。

12.10

第3回

回準備手続。
◆原告への宿題
1、甲9の組織規約に記載されている原告事務所所在地が原告発足時と異なっていることについての説明を書面で提出。
2、12月17日までに、請求原因事実を整理して、提出。
3、1月31日までに、被告退団当時を知る第三者の陳述書を提出。
◆被告への宿題
原告準備書面(1)の第2、3〜6に対する詳細な認否を提出。




 12.19 求釈明3
(正確には4)
 前回期日の原告の宿題「甲9の原告組織規約に記載の原告事務所所在地が、原告発足当時と異なっている理由を明らかにする」について、《書証として提出した原告の規約(甲9)は、被告が原告に在籍していた当時のもの》(原告準備書面(3)第1)という原告の回答は明らかにおかしい。なぜなら、被告が原告に在籍していた当時(1987年の発足時から退団した1995年1月まで)に、原告事務所の所在地が甲9の原告組織規約に記載のそれであったことはないから。‥‥
12.18 準備書面3



12.27

証拠説明書5

甲27


 




2008.2.4 反訴状 1、反訴状請求の趣旨
反訴原告(被告)が、「人魚伝説」「それからの夏」の著作権及び著作者人格権を有することを確認する。
との判決を求める。

2、本訴との関連性
 反訴被告は反訴原告に対し、戯曲「人魚伝説」「それからの夏」について反訴被告が上演権を有しているとして戯曲上演権確認請求訴訟を提起した。
しかるに、反訴被告は上記本訴において、単に反訴被告が本件作品について上演権を有しているのみならず、本件作品の著作者はそもそも反訴原告ではなく、反訴被告を構成する役者たちであると主張して、本件作品の著作者が反訴原告であることを全面的に争うに至った。そこで、反訴原告は本件作品の著作者が反訴原告であることの確認を求めて反訴を提起するに至ったものである。



2.4 準備書面4  「人魚伝説」「それからの夏」の著作者は鄭氏ではなく、劇団の役者たちであるという原告準備書面1の主張に対する詳細な認否
2008.2.5
 
第4回
 第3回準備手続。
 和解の協議(1回目)。
◆被告への宿題
和解案を検討し、3月12日までに提出



3.21
証拠説明書4

 
 
 
3.21
村松恭子氏の陳述書(2)(乙11)
「人魚伝説」が原告の演出家や役者たちが共同で作り上げたものだという原告準備書面(1)の主張について知っている事実の陳述。
・ 「人魚伝説」は原告を構成する役者たちの共同作品だったかどうか。
・ 座付き作家と外部の作家について
・ 台本への書き込みの意味について
・ 甲3号証の執筆経過について
・ 「それからの夏」の執筆経過について



3.21 渡辺えり氏の陳述書(乙12) ・ 原告のために戯曲を執筆した事実。
・ 上記作品執筆時の原告の支払とは初演の対価の意味であり、上演権の譲渡の意味ではないこと。
・ 再演における金銭の支払とは通常、上演料であり、謝礼と理解することはできない。
3.25
第5回
第4回準備手続。
 和解の協議(2回目)。

◆原告被告への宿題
 裁判所の提案を検討






4.18
第6回
第5回準備手続。
 和解の協議(3回目)の結果、不調。

原告、本訴について、請求の放棄、
    反訴について、請求の認諾 をし、裁判終結。
    請求の放棄・認諾調書、作成。


鄭義信氏から新宿梁山泊に対し提訴された「戯曲上演禁止仮処分事件」(1.31/08)
 自主的な解決の道が閉ざされため、鄭氏は2007年7月6日、「それからの夏」の上演禁止の決定を求めて仮処分の申立に出ました。
手続は、18日後の7月24日に、新宿梁山泊が上演を中止するという和解で決着。以下はその記録です。(但し、著作権の関係で、新宿梁山泊の書面は公開できないことをご了解いただきたい)

月日

申立人(鄭義信)(手続上、債権者と呼ぶ)

月日

相手方(新宿梁山泊の代表金守珍)(手続上、債務者と呼ぶ)

2007
7.6

申立書

本件は常人にはにわかに信じ難い著作権侵害事件である。‥‥
1、はじめに――本件申立の概要――
2、当事者
3、権利の目的たる著作物及び著作権者
4、債務者の無断上演・改変行為
5、債務者との交渉
6、本上演の許諾の有無
7、保全の必要性
 
 
 

1999年3月、「千年の孤独」の上演に関する覚書(甲2)
新宿梁山泊が「千年の孤独」新宿紀伊国屋ホール公演を鄭氏に無断で上演しようとして事前に発覚し、鄭氏の要請で、ペナルティとして金30万円の支払、なおかつ無断改変しないことを約束させる覚書を締結したもの。



2005年3月28日付け鄭義信氏代理人の日本シナリオ作家協会から新宿梁山泊宛て通知書(甲5)
2005年3月、新宿梁山泊が鄭氏に彼の「人魚伝説」の韓国上演を一方的に通告してきたので、日本シナリオ作家協会を通じて、改めて上演中止を申し入れたもの。




2005年4月8日付け日本シナリオ作家協会から新宿梁山泊代理人宛てFAX(甲7)
新宿梁山泊代理人からの通知に対する鄭氏側の回答。様々な見地からして、上演許諾に同意することは不可能であること。




2007年4月26日付け日本シナリオ作家協会から新宿梁山泊宛て通知書
(甲10)
2007年4月、新宿梁山泊は鄭氏に彼の「それからの夏2007」の上演を一方的に通告してきたので、鄭氏は、直ちにシナリオ作家協会を通じ、彼の7作品について上演不許可と改変禁止を通告したもの。




2007年6月20日付け日本シナリオ作家協会から新宿梁山泊宛て通知書
(甲12)
前記通知書に対し、同劇団から、そもそも鄭氏の作品は「パクリ」「盗作」であり、その上演に鄭氏の同意は不要である旨を内容とする書簡が届けられたので、再度、「上演を許可しない。無断で強行するなら法的手段を取る」旨の警告文を出したもの。




2007年6月22日付け日本シナリオ作家協会から新宿梁山泊宛て通知書
(甲13)
前記通知書に対し、同劇団から「それからの夏 2007」を8月1日から上演するという仮チラシが送りつけてきたので、直ちに「6月26日までに公演中止の回答なき場合は、公演差止の仮処分申立を行う」旨の最後通告書を送付したもの。




鄭義信氏の陳述書(甲14)
1 略歴
2 新宿梁山泊を退団した理由
3 退団後の無断上演並びに無断改変
4 劇団「青脈」に対する無断上演許可
5 「人魚伝説」上演中止(2005年)申し入れと、その結果
6 「それからの夏」上演中止申し入れ
7 2007年6月6日付けの手紙「盗作」に関する反論

7.17

答弁書

1、債権者(鄭義信)の本劇団(新宿梁山泊)在籍中に執筆した作品は債務者(金守珍)を筆頭に本劇団が総力を挙げて協力して出来上がったもの。
2、債権者が本劇団を退団するときの言葉は、本作品群の上演に対する事前の包括的同意である。
3、債権者退団後も、債務者は常に事前に債権者の承諾を求め、債権者も承諾していた。
4、「千年の孤独」で女性役を男性に変えたことは、作品のイメージを変えるようなことでない。
5、韓国の劇団「青脈」の無断上演について、債務者は一切関与してない。
6、2005年3月の「人魚伝説」韓国公演について、債務者が債権者に送った文書(甲4)は、一方的通告などではない。
7、2007年4月に、「それからの夏」の上演について、債務者が債権者に送った文書(甲9)は、一方的通告などではない。
8、権利の濫用
 債務者は債権者に対し、以上の通り、何らの約束違反もなく、債権者が債務者に対し、債務者在籍中に執筆した作品の上演を拒否することは、事前の包括的同意を得ている債務者の使用権を侵害するものとして権利濫用である。

日本シナリオ作家協会事務局長金寿美氏の陳述書(甲15) 第1 略歴
第2 2年前の交渉の経緯
第3 本年度の交渉の経緯
第4 裁判に望むこと



7.16 証拠説明書1



7.17

1審尋 「新宿梁山泊」側の代理人は、次の通り主張。
1、戯曲「それからの夏」の著作権が鄭氏にあることは認める。
2、同劇団に今回の上演の権利があるのは、鄭氏が退団時に言明した「一声かけてくれれば、許諾する」が現在もなお有効であることによる。
3、同劇団は、鄭氏退団後、彼の作品の無断使用も無断改変も一切していない。だから、信頼関係を壊すような事実はなく、鄭氏の退団時の言明は依然維持されている。
 そこで、3の事実の有無が主要な争点となり、これについて引き続き、審理。

7.19

準備書面1

債権者準備書面(1)の1で主張した債務者主張の再確認に対し、債務者から別段、異議は唱えられなかった。‥‥>>

1、はじめに――債務者主張の再確認――
2、退団後の債務者の無断上演について
3、退団後の債務者の無断改変について
4、劇団「青脈」に対する無断上演許可について



証拠説明書2



平田オリザ氏の意見書 1 略歴
2 今回のトラブルについて
3 劇作家の戯曲の著作権について
4 戯曲の上演について
5 戯曲の改変について



鄭義信氏の陳述書2 1 退団後の無断上演について
2 退団後の無断改変について
3 劇団「青脈」に対する無断上演許について



7.20      準備書面2

債権者は、債務者より過日提出された「それからの夏」(以下、本著作物という)に関する脚本(乙5)を債権者が入手した元の脚本と比較検討したので、その結果に基づいて、本著作物の無断改変について、以下の通り、主張する。
‥‥>>
本著作物の無断改変について






7.22 準備書面1 第1、債権者準備書面1に対する反論
1、無断上演ではなかったこと
2、無断改変がなかったこと
第2、債権者準備書面2に対する反論
債務者は債権者の脚本を一切変更する積りはないこと。
7.23      準備書面3

債権者準備書面(1)の1で主張した債務者主張の再確認に対し、債務者から別段、異議は唱えられなかった。つまり、本件は、債務者が権利濫用の抗弁を自ら疎明できない限り、債務者の主張は斥けられることになる。‥‥>>
1、はじめに――債務者主張の再確認の帰結――
2、退団後の債務者の無断上演について
3、退団後の債務者の無断改変について
4、劇団「青脈」に対する無断上演許可について
5、タイトルの改変について



証拠説明書3



7.24

第2回審尋

以下を内容とする和解成立(和解調書
1、「新宿梁山泊」は、「それからの夏2007」の上演を中止する。
2、鄭氏が退団時に表明した上演許諾の現在の効力について正式裁判で確定するまでは、同劇団は「それからの夏」を上演しない。



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